ウォーロード/男たちの誓い


新宿ミラノ1にて観賞。せっかく広いのに、場内はガラガラだった。



「中国の昔の話」ということしか知らず、金城武を観に行った。「レッドクリフ」では吹き替えられていた彼自身の声が聴けるのが嬉しい。語り手として、全編ナレーションもあり。


太平天国の乱の最中の中国。部隊を全滅に追いやられた朝廷軍の将軍パン(ジェット・リー)は、盗賊のリーダー・アルフ(アンディ・ラウ)と弟分ウーヤン(金城武)に、仲間や村を守りたいなら官軍の兵士となるべきと説く。三人は義兄弟の契り「投名状」を結び、太平軍を次々と討伐していく。


作中「『善』のための死もある」というセリフが出てくるけど、何らかの目的のためには死も必要だ、ということを(その是非でなくテーマ自体を)、ここまで分かりやすく前面に押し出してる映画は珍しいと思った。
三人が手を組んで初の戦いはあっけなく勝利するので、強いんだな〜この調子でアクションが続くのかな?と思っていたら、大きな戦闘シーンは数回のみで、後半は人間関係に焦点が当てられる。


(以下ネタばれ?あり)
ジェット・リー演じるパン将軍は、自分の理想を政治的に果たすため、二人と契りを結び、朝廷に頭を下げ、涙を流しながら捕虜を殺す。一方アンディ・ラウ演じるアルフは、学は無いが仲間を大事にする「村のリーダー」だ。作中では二人のぶつかり合いが大きなドラマとなる。
金城武のウーヤンは、現実的なパンと義理人情派のアルフの二人に挟まれた、中立的な立場。年若く一途なおぼこ風で、「死体から取ってきた」という十字架のペンダントを、「何だか分らないけどキレイだろ?」とプレゼントする場面が可愛い。
その彼が、戦場ではない所においては、最も多く人を殺す。「投名状」のために通行人を捉えて斬り、軍の規律を守るために見せしめの処刑を行い、邪魔な女の息の根を止め、最後に投名状を果たす。そうした際の、これまでの出演作では見られなかった表情や演技が新鮮だ。
ベタなことを言うようだけど、「女を殺す」場面では、どうせ死ぬならああいう眺め(金城武の顔を下から見上げたアングル)を目にしてからがいいなと思った。


ジェット・リーは終始「唇の乾いたグッチ裕三」にしか見えず。でも三人とも男前すぎるより、冷静に観られるからよかった。
また、蘇州城の太平軍のリーダーが「レッドクリフ」時の中村獅童に似ていたので、中国ではああいうキャラクターはああいう顔なのかなと思った。