パッセンジャーズ


クレア(アン・ハサウェイ)は、飛行機事故で生き残った5名のセラピーを依頼され、仕事に取り掛かる。しかし周囲に尾行者らしい人影が現れ、生存者は一人ずつ姿を消してゆく。


(以下ネタばれに近いことを書いてます)



劇場から出る際、ポスターの「その真相を追ってはいけない」というコピーに違和感を覚えた。「追わなきゃだめ」なんじゃないの…?
予告編から私が連想してたのは、ウィリアム・アイリッシュの「階下で待ってて」。仕事中の恋人がビルから出てこないまま忽然と消えてしまうという似ても似つかないストーリーで、最後に読んだのは10数年前だけど、なぜかふと思い出した。もやの中の敵と一人で戦う、というイメージかな?
実際はいわゆるサスペンスではなく、言うなれば「癒し映画」だった。でも「癒し」が得意でない私も、主人公が「真実」を知るまでの、地に足ついてない感じを味わうのが楽しかった。夢だと気付いていながら目が覚めない、そんな感じ。


観た後に抱いた大きな疑問は、ここで描かれているのが、クレアのみが認識している世界なのか、それとも「中途」の数名が同じように認識している世界なのか、ということだ。エリック(パトリック・ウィルソン)が全裸で登場したり、ハイテンションに迫ってきたりするのは、彼に性的魅力を感じた彼女の意識が作り上げた姿だと思うんだけど、それならば他の数名はどんな彼を見ていたのか?もっともどんな映画であれ「誰にとっての世界か」ということを考えたらキリがないし、現実でも皆が認識する世界が同じものであるか否かは解釈が難しいところだから、何とも言えない、あるいは逆に、何とでも言えるけど。
私の「夢」の中に出てくる彼が、私と同じ「夢」を見ることはないけれど、恋愛などの感情や体験が交差することにより、共通の「夢」を見ることもあるかもしれない。そう考えると面白い。


主人公の役どころは、今の女優さんならアン・ハサウェイにしか出来ないなあと思った。心身ともに健康で聡明だけど、ちょっと気のつかない感じ(同行者いわく「あんなセラピスト、いらいらするから絶対やだ」笑)。「プリティ・プリンセス」以降の劇場公開作は全部観てるけど、これが一番しっくりくるかも…少なくとも「ゲット スマート」よりはまってる。作中の、常に黒(に近い色)のトップス+パンツという服装、同じく黒を基調とした、無機質だけど自然な感じの部屋は、とても感じがいい。
パトリック・ウィルソンも結構かっこよかった(…と思ったのは初めて・笑)裸や下着姿、バイクに乗るなど見所も多い。一番チャーミングなのはラストの事故シーンかな?これは意味深いことかも。
久々に見たダイアン・ウィーストに口をゆがめたクレア・デュバル、犬なども良かった。


同行者の感想は「落語みたいなオチだな」。ちなみに私の隣のおじさんも、同行者の隣のおじさんもスースー寝ていた。上に書いたように終盤までは本当にもたもたしてるので(それがこの映画の味だと思うけど)、眠くなるのも分かる。