正直政治家 チュ・サンスク


のむコレにて観賞、2020年韓国制作、チャン・ユジョン監督作品。「言葉が頭の中じゃなく腹の奥から出てきちゃう」「うんこじゃあるまいし」「そんな感じ、括約筋が使えなくなって」との説明で「嘘がつけない」状態を説明するあたり安定の韓国作品。ナ・ムニのアレも何度も見られる。

冒頭コメディ調に描かれる、見事なチームプレイで悪事を隠蔽し狡猾なやり方で支持を集める選挙運動が、主役が中年女性、しかも演じるのがラ・ミランというだけで面白い。例えば日本(韓国にもあるのか)の「男じゃまじで怖いけど女なら笑える」お笑いの定番「鬼嫁」ネタなどの精神とは逆だということは、嘘がつけなくなったチュ・サンスクが嘆く「男ならここまでのことにはならない」の一言に表れている。

「政治家が嘘をつけなくなる」という設定自体はそんなに面白いものでもない。その口から出てくるのは、字面だけ見るなら予想通りのものばかりだから。ラ・ミランの円熟の演技による当人の様子や、それによって起こるあれこれ(「正直な候補(原題)」として却って支持率が上がるというのは予想がつくところなので、それ以外のあれこれ)が見どころ。

あってもなくても本筋には支障ない外国人メイドのエピソードにおける、韓国語が流暢なのに周囲は誰もそう思っておらず「韓国語が上手だね、ずっとタメ口だけど」「誰も私に敬語を使わないのにどこで覚えるの」なんてよいやりとりだ(敬語とは異なるけど、日本語学校で先に丁寧語から勉強する理由がここにある)。