オンネリとアンネリのおうち



マリヤッタ・クレンニエミの同名小説を元にした2014年作。見終えてトイレに入ったら、女の子が二人、全部のドアをノックして笑いながら走り抜けたのがよかった(ノックし返した、一応・笑)


オープニング、太陽の光に輝くピンクのバラに「アキ・カウリスマキが愛するフィンランドの映画」特集で見た「夏の夜の人々」(1948)を思い出した。どちらも夏の話である。原作には無い「バニラ」だけのアイスクリーム屋さんや白いままの豚の貯金箱を「放っておいてはいけない」ことの象徴としていることからも分かるように、これは色のお話で、色遣いが最大の特徴だけれども、モノクロのこの映画も見てみたいと思った。


一見すると本作は子ども映画によくあるひとときの冒険もので、夕ご飯か明日の朝までに帰るところが「家」を得たことでこんなにも長い間子どもだけの時間が続くのかなとも思うけれど、このお話のいいのはそうじゃないところ。オンネリとアンネリはそのまま二人で暮らし続ける。原作の面白いのは親の了承を得て二人だけで暮らすようになるまでにこそ一抹の寂しさがあるという点だけども、映画にはそのような機微は無くどこまでも明るい。



アンネリの両親は離婚し、冒頭の彼女はパパとその恋人と住んでいるが、最後に顔を見せる女性が愛人然としていないのがいい。「パパに女ができて家族を捨てた」なんてステレオタイプな描写をしない。人間関係の事情は様々だということが、何も描かないということで示されている(意図はなさそうだけど)。アンネリがママについて言う「仕事してない、大学の先生だから」も面白い。子どもって「先生」は仕事じゃないと思っているふしがある。ちなみに原作では大学の先生をしているのはパパの方で、映画は現代仕様になっている。


写真は恵比寿ガーデンシネマのカフェで見つけたコラボメニュー、「オンネリとアンネリのアイスクリーム」フランボワーズ。白い豚の貯金箱を模したクッキーつき。ロビーの大きなポスターの前にて。