ジギー・スターダスト



ケイズシネマにて公開初日に観賞。大回顧展のおかげで、私にあるまじき、「うちにある映画」を二日連続で劇場で見るはめに(笑)
くそ古い、飽きるほど聴いた曲が暗い中で延々と歌われるだけなのに、寝不足のはずが全然、全然だった。「The Wild Eyed Boy From Freecloud」から繋がり通り「All the Young Dudes」に入るところなんて、体が震えた。


オープニング、ネオンサインとは何かを伝えるものなのだとふと思う。ハマースミス・オデオンの前に溢れるファンの背後に見えるあのポスターに、ああ、これはこのライブが「これから」だった世界なのだと思う。
「Oh! You Pretty Things」が始まるや否や会場が大いに沸くのが、歌詞の内容を考えたらそういうことかなとも思うけど、「リアルタイム」じゃないからやっぱりよく分からない。誰かのファンでライブに行ってると、きたきた!って時があるよね、あの感じ。


この頃と言えばミック・ロンソンである。子どもの頃から思ってたんだけど、彼ってださくない?でも私としては、あの頃のこの世界には居なくちゃいけなかったわけ。ギターも独特で最高だし。
本作ではロンソンのソロもしっかり見られるのが嬉しく、ボウイの一回目の衣装替えの時の、ロンソンのソロが終わると時間を戻してその音をバックに楽屋の着替えを映すという演出も楽しいけど、私が一番ぐっときたのは、アタマの「Hang on to Yourself」の時のマイク交換かな。バンドだからね。


大回顧展において、私はキュレーター側が少し口出ししすぎだとも思ったんだけど、「ボウイは深追いしない」という一文がどうにも心に残ったものだ。だからこの映画を見ながら、「君は一人じゃない」という優しさと「変わり続ける」という身軽さを意思でもって持ち続けられる人って希有に違いないと考えた(でもって、それにしたって、映画はあそこで切れるけど、ロンソンはどうしたんだろう?と思うよね)。
昨今は「爆音上映」「発声可能上映」流行りで、他の音楽映画はそうして見たらさぞかし楽しいだろうと思いもするけど、不思議なことにこの映画は、満席の劇場で皆で静かに見るのが合っているような気もした。こんな世界が確かにあったんだ、と思った。