最近観たもの


▼みなさん、さようなら


・「団地から一歩も出ずに生きる、ときめた」という文句に惹かれて観賞。私も「外」には向かわない方だから、どんな話かなと思って。
・冒頭、帰りの会が全クラス一斉に終わるってありえないだろ!と思うも、次の場面で主人公の12歳時を濱田岳が演ってるのに、いい意味で色々どうでもよくなる(笑)
・中盤にこちらの視点が変わり、ラストに主人公の視点が変わる、という構成が面白い。でも中盤「過去」が明かされる場面に、一気に熱が高まりながら、心のどこかで、結局ああいう「物語」を面白く感じちゃうんだよなあ、理由もなく「団地」にこだわってるという話なら面白く出来るものだろうか?受け止められるものだろうか?と考えずにはいられなかった。
・「原作通り」なんだろうけど、主人公には、使える可能性があるかどうか分からないコンドームを持っていてほしかった。自販あるよね、きっと(笑)
倉科カナは「ヒロイン」という名の妖怪のよう。同窓会の時の彼女の格好!を見て、自分の経験していない時代の服装をするのって楽しそうだなあと思った。隣の女の子の履いてたデニムのタイトスカート、似たようなの持ってた。



アウトロー


アメリカ!って感じの風景に始まり「犯罪現場」を追う冒頭や、カーチェイス、最後の銃撃戦などは楽しかったけど、その間を繋ぐ筋の描写がつまらなくて、とても長く感じた。ボウイ様の曲を延々聴きながらのしょぼいシーンなんて辛かった。
・一番面白かったのは射撃場の一幕。もっともロバート・デュヴァル効果による。射撃シーンにて、「極大射程」のマーク・ウォルバーグに倣って尻からのショットを入れればいいのに。トムは上半身派だよね。
・後頭部から登場するトムの、変な言い方だけど、ノーマン・ロックウェルの絵の中の男の子が軍人になったような、ぴっしりしたうなじがやたら目立つ。始めの方の「日常」描写に床屋さんの場面も入れて欲しかった。もしくは自分でやってるとか(笑)
・ヒロイン役のロザムンド・パイクは好きな女優。「素」の時にびっくり顔で、「びっくり」してるはずの時にはびっくり顔に見えないという変な顔。彼女が夜のオフィスで机に寄りかかったり、エレベーターホールで振り向いたら誰も居なかったり、という幾つかの場面が、そこだけ突然ヒッチコック調で妙な感じを受けた。
・作中、「逆らえなくて」悪事に加担した、と述べる者が二人居たのが印象的。一人目はトムに情けを掛けられるが、二人目は、まあ悪事のレベルも違うんだけど、トムが告白を聞く暇は無いので、ただのしょぼい奴として死んでいく。


マリーゴールド・ホテルで会いましょう


・空港のロビーに一堂がずらりと会する場面には興奮したけど、観ながらどうも、日本で「名優」を集めて作っても似たようなもんじゃないか、という思いから逃れられず。日本映画がつまらないっていう意味じゃなく、枠を出ないっていうか。
・「スカイフォール」に続けてデンチ様がPCを駆使しているのが面白い(二作とも危なっかしいとも言える・笑)冒頭、苛立ちと寂しさに襲われている彼女が、インドに行って、ビル・ナイの他愛ない冗談に初めて笑顔を見せる場面がとてもいい。
・ペネロープ・ウィルトン演じるビル・ナイの妻はやなやつで、損な役だなあと思いながら観てたけど、最後の場面はよかった、作中一番ぐっときた。
・私の母親は数年前に人工股関節の手術をしているので、マギー・スミスのくだりは興味ぶかく観たんだけど、現実味はゼロだった。そういう話なのでいいんだけども。


ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日


・原作は未読。物語は「現在」中年男性であるパイが、訪ねてきたカナダ人の作家に対し、自らについて語るという形式。このパイ役の男性がものすごく胡散臭いことが、「ボート」と「トラ」だけで生き延びた「227日」の何だこりゃ!という内容を、ボートの綱のように私の心に繋ぎとめてくれた。
・前半の、インドの学校教育(子どもの数が多い!)、食事、舞踊や音楽といった要素も面白い。パイの打楽器の演奏(後に筏の上でも聴ける)や、恋人のトラを真似た仕草などがチャーミング。
・嵐で貨物船が難破し、ボートと共に海に投げ出される場面の迫力に、「キャスト・アウェイ」を思い出す。タイトなそれに比べて冗長な感じがするも、あのおっさんの話だから長いんだろう、と思う(笑)
・「サバイバル」において何が「見える」かなんて、そんな経験したことのない私には「分からない」のだから、何だってありえると思う。
・「水」にまつわるエピソードや映像が全篇に散りばめられている。少年パイがそっと飲む「聖水」は映らないが、牧師にもらったコップの中の水には、それこそ「口の中の宇宙」のように、全てが在ってもおかしくない、ロマンを感じる。「世界一きれいなプール」の場面には、「水がきれい」とは大抵「透けて見える」という意味である、というのは面白いなと思った。
・青年パイがよく行く、恋人と別れる際にも語らっていた水辺の素敵なこと(何のための場所なんだろう?)この場面はトラとの別れと対になっている。何かしら言葉に出来た別れは思い出さない(思い出さずに済む)が、何も無かった別れは心に残る。
・「現在」のパイが作家と語らうベンチの前にも、人工的らしき川が流れている。水がある限り、物語は途切れないとでも言うように。