わたしたちの宣戦布告



出会ってすぐ恋に落ちた若いロメオとジュリエットが、息子アダムの病気と闘う物語。


面白かった。懐かしい感じも新しい感じもする。音楽がとてもよく、とくに手術当日、手術室にアダムを送り出すまでの音楽には、こういう使い方があるのかと思わされた。
難病のアダムは幼く喋ることも出来ないから、これは本当に「二人」の物語。だからラストにアダムが意思を表す時(それを私が受け取ったと思える時)、それが他愛ない、ゲームしたいなんてことでも、心動かされる。


まずはロメオとジュリエットの出会い。彼女が彼の「種」を飲み込んだみたいな格好で、関係が始まる。日本映画なら省略しないであろう「結婚(式)」の描写は無く、子どもが産まれる(その直前、二人の前にある絵は何だろう?)のがフランスぽいなと思っていたら、アダムの手術の際、互いの両親は初めて顔を合わせるのだった。他にもジュリエットの「父親になるのが早すぎたなら、また一人で暮らす?」というセリフなど、喧嘩腰なわけではなく「提案」として吐かれているところから、母親一人でも何とか子育て出来る社会なのかな、と思った。


アダムが「病気である」ことが「分かる」まで、物語はじりじりと進んで行く。合間に「細胞」?の映像が何度か挟み込まれるの、ここ数年以内に他の映画でも観たんだけど、思い出せない。
マルセイユの病院において「腫瘍」があると判明した際、ジュリエットの携帯電話から皆に広がっていく様子など面白い。変な言い方だけど、ものが伝わるってこういうことかと思う。それを聞いたロメオは走り出す。ジュリエットは検査の際にアダムと引き離される時に走ったものだ。


本作は「ガブリエル」と「医師と看護師、それから公立病院」に捧げられている。二人はアダムが「産まれた時から世話になっている」先生を始め、病気について新たに「分かる」度に病院を移ってゆく。どの先生にも魅力がある。病院によって雰囲気が違うから、こっちはこんなふうなのかと思うけど、そのうち(おそらく作中の二人同様)慣れていく。
高名な「サンダース先生」について、どの人かな?と推測し合ったり、受付で「個人的なこと聞くなよ」だなんて、こんな事態にでもならなければ表に出ない食い違いが起こったりする場面がいい。ガン治療院に隣接する保護者用施設から通う様子や窓からの景色(を眺める二人)も心に残った。


中盤とラストにマルセイユの海。いずれも荒れてる時季で波が高い。ラストの方で映ってるのがイフ城かな?