蜂蜜



私の知ってるトルコといえば主に漫画「トルコで私も考えた」から、ここに描かれてるのはまた違う世界。時代は不明、人々は森や動物と共に生きている。印象としては、最近の作品なら「ブンミおじさんの森」に似ている。終盤、母と子が父を探して町のお祭り?に出向く場面では「バビロンの陽光」を思い出した。


小さなユスフは、養蜂家の父が大好き。しかしあるとき蜂が大量に死に絶え、父は新たな箱を仕掛けに出たきり戻ってこない。
地味な映画なので何度か眠気に襲われたけど、子どもものとしては面白かった。ユスフが父を慕う様子は、まるで恋しているよう。自分にくれるはずのものを、他の子にあげてしまったと思いむすっ→しょぼん、とするくだりがいい。作中ずっと「自然」なユスフの表情が、この「むすっ」の時だけわざとらしい(笑)
母が夕食時に出すミルクを、父が黙って飲んでくれるあたり「ブルーバレンタイン」の朝食の様子を思い出した(「あんたばかりいい役を取って!」ってこと・笑)。父から「夢の話は人に聞かれちゃいけない」と言われたユスフは、夢についてべらべらと喋る母親の膝から、恐れたような顔付きで離れる。


ユスフは、今の日本の家庭じゃあの年齢ではしないだろうことをする。りんごをナイフで切ったり、蜂をいぶす器具のためにマッチを使ったり。馬に水をやるのに不安定なところにバケツを置いて、引っくり返してしまうのが良かった(笑)その後、火の前で濡れたノートを乾かす。こういう日常の場面が面白い。
父を待ちながら、大きな窓に面した部屋のソファで寝る。このソファが固そうだけど素敵で、私も眠りたくなった。一つのプレートに盛られた朝食も、大したことないんだけど美味しそう。


冒頭の一幕、画面に映った父の背中はとても広い。作中、「子ども」と「大人」…ユスフとその外の世界とははっきりと分かれている。しかし彼が戻ってこない父の「死」を理解した時、初めて、家や学校の外観、先生の顔など、外の様子がはっきりと映るようになる。彼のその後を描いたという前二作も、観てみたくなった。