ザ・タウン



公開初日、ミラノ1にて観賞。なんてよく出来た、面白い映画だろうと感心した。「年間300件以上の銀行強盗事件が発生する」ボストン北東部のチャールズタウンを舞台に、生き方を変えようとする男の姿を描く。監督・主演にベン・アフレック


冒頭、男4人が強盗の計画を練っている。「警備員のやつら、薄給のくせに度胸がありやがる」なんてセリフに、幾らかの事情や状況が透けて見える。その後の展開も懇切丁寧で分かりやすい。
しかし例えば、警察はなぜもっと早くに警備会社の線から犯人を追わなかったんだろう?といった「穴」が所々にある。それでも映像が素晴らしいためか白けることはなく、変な言い方だけど、却って愛嬌につながっている。好きな女性に危害を加えるやつを痛めつけに向かうベンの単純さ、そもそものベンの顔の間抜けさなどがあいまって、どことなく「可愛らしい」映画という印象を受けた。


しかし途中から、「ザ・タウン」の意味が重くのしかかってくる。強盗が家業のように引き継がれていく町、しがらみから脱け出せない町。そもそも私は予告から「ハートブルー」を思い浮かべており、タイトルにぴんとこなかったんだけど、ああいう話じゃない。「愛する人に『正体』がばれる」部分はひょいっと描かれる。
不思議なことに、主役のベン、相棒のジェレミー・レナー、その妹のブレイク・ライヴリー、皆顔が似通って見えた。それに対し、外からやってきた支店長のレベッカ・ホールは別の人種のようだ。ちなみに私はブレイク・ライヴリーびいきなんだけど、この作品ではいまいちだった。とくに終盤、バーのカウンターでのアップが続く場面は、観ているのが苦痛なほどのっぺりしていた。


ベンをリーダーとする強盗団の仕事ぶりは「最先端」という感じも野卑な感じもせず、まさに「町の職人」というのがふさわしい。カーチェイスもそれに即した、わりとリアルなものだ。
彼らが町の人間なら警察も、銀行の警備員も、皆そうなんだろう(何人かについては、確実に分かるセリフがちゃんと置かれている)。そう思うと、全てのシーンがより面白い。「仕事」の最中、彼ら目線で撮られる、すれ違う人々、皆が町の人間なのだ。ラストの野球場のくだりの、圧倒的な面白さ。ほんのちょい役の警備員が銃に手をかけるシーンの、かっこよく感じられること!


「映画的」な物の扱い方もスマート。とくにレベッカ・ホールの「足が濡れるまで」歩いた記憶が、ベンの体の下でフラッシュバックする場面にぐっときた。