ジャライノール



内モンゴル自治区の炭鉱の町・ジャライノールを走る蒸気機関車の、運転士たちの物語。
観賞したポレポレ東中野って、映画館は地下だけど、1階のカフェから総武線が見えるし、電車ものに合ってるなと(笑)前半はSL、後半は大地を走る列車ものでもあった。


前半は、くそ寒そうな辺境の地で老人と若者がいちゃいちゃする日常。退職を控えたジューと、まだ若いリー。後半は、その日々の延長でありながら、二人にとって特別な一日が描かれる。
素朴な題材を扱ってるけど、非常に「映画的」な作品で、全ての場面が決まりすぎなほど決まっている(私にとっては少々やりすぎなほど)。迎えに来るのが遅れたリーの自転車をジューが蹴るカットのかっこよさ、駅で姿を消したリーを見つけるジューのやりくちの可笑しさ。


映画は、二人が機関室でビールとおつまみの「鶏の足」「鍋に2杯茹でた落花生」「にんにく」をやる場面から始まる。室内に入り込む蒸気、煙突から上る煙、男たちのふかすタバコの煙、全てが寒々しい風に吹かれ、画面の中をはためいている。男たちを積んだトラックの荷台にハウスよろしく設えたビニールが飛んでいく様子は、「プリシラ」の有名シーンを思い出したけど、何て違うことか(笑)


ジューに懐いていながら、町から外に出ると食べ物や寸劇、スポーツなどに心奪われ老人のことなど忘れたような顔付きになるリーの様子が面白い。それが「若者」ってことなんだろう。
「もう二度と会えない」予感に終わる映画はたくさんあるけど、この物語の場合、二人は「距離」「交通網」の問題でまず会えないんだよなあ、なんて思ったり。


社則の「よい家族生活を送ること」という文言、「二人転」(日本の漫才のような芸)の女性の衣装に描かれたミッキーマウス。町の子どもたちが着ている服は、日本ならイオン系のお店で売っていそうなもの。どこで買ってるんだろう?たんに「知らない世界」を眺めるだけでも楽しい映画だった。