帝一の國



道すがらに目にした、原作絵と実写版が並んだ看板に惹かれて観賞。古屋兎丸のこれは読んだことないけど、うまいことやってそうだなと思って。実際とても楽しかった。見せ方がいいし、大変素敵な大鷹弾(竹内涼真)いわく「まっすぐ」すぎて、ともすれば空洞のような、下手したら他の面々に全部持っていかれてしまうような役なのに、あれだけ輝いている菅田将暉ってすごい。


序盤の「ひとりテスト」のくだり(あそこにもう、帝一の人となりが表れてるんだよね)、テストを実施する素晴らしい場面は撮り方の良さの方が目立つけど、テストの結果を知る場面の素晴らしさは菅田将暉(と吉田鋼太郎)によるもの。予告編から想像してたより100倍よかった(笑)それから、たまにスクリーンの中の客席と劇場の客席とが繋がっているかのような映画体験が出来るものだけど、本作の学祭のシーンもそうだった。これら二つの場面を満席の場内で味わえただけでも料金二回分くらいの価値はある。


「時は昭和」とはいえ全く女が存在しない世界でもって繰り広げられる権力闘争劇…ってホモソーシャル系の韓国映画に近いから、そういうものを、多少目をつぶって、面白さに負けて見ちゃう映画ファン(私とかね)にお勧めだなと思いながら見ていたら、これは全然見易かった。「変化」の話であり、「選挙」の歩みのように、庶民の次には女も人間になれるという予感と共に見られるから、心に蓋する必要がなかった。帝一が総理大臣を目指す理由も、納得できるようなできないような、ながらいいなと思った。