白鳥・三三 両極端の会 vol.11



ふたりトーク
三遊亭白鳥「女性版文七元結
 (中入)
柳家三三「天使がバスで降りた寄席」
エンディングトーク
 (3/29・紀伊國屋ホール


互いに宿題を出し合っての回。オープニングトークにて、三三「古典をちゃんと覚えて普通にやろうという気には…」白鳥「俺がそうしても金返せってことになるし、そもそも文七元結って面白い噺じゃないし…」そうだそうだ!と心の中で快哉を叫ぶ私(笑・白鳥さんは何か違うと思ったのか、すぐに次の言葉を継いだけれども)。
あれっ、でも、つまらない話を「女目線」にして工夫したところで面白くなるものだろうか?と気付きもする。文七は「普通」の古典落語の演者さん達も苦労しているであろう(と聞いていて感じる)内容だから、白鳥さんのこれも改作というより皆がやっているうちの一つ…いや改作か、やっぱり(笑)ともあれ大きくいじられた結果、とても面白かった。


白鳥さんの落語には田舎者、貧乏者、更に近年は女というマイノリティ目線が必ずあり、そうすると文七のどこをどういじることになるかというと、第一に、あんな大事をしてのけるお久の存在感がぐっと大きくなる。第二に、娘が吉原に身を沈めたっていうのにその足で大金を手放してくるとは何事だってことになる。佐野槌の女将いわく「死ぬより辛いこともある」。
知らない間にお久が、という方が洒脱なのは分かるけど、何度も聴いてたら(この言い方したくないけど)女としては嫌になる。その「被害」を「好きでもない男に抱かれて」云々と言われると、当の女としては何かそれは違うと思わなくもないけど(笑)でもまずはそこから「ひどい目に遭っている」と解釈してくれてるんだなと。


この日はことのほか、白鳥さんの高座を、円丈のことを思いながら聴いた。円丈の古典は白鳥さんのそれとは全然違ったけど、文七についてはまず、二人が元々恋人同士だったという全く同じアレンジをしている。おそらく、筋を通そうとした結果たまたま同じことになったのだと思う(違っていたらすみません)。円丈が鈴本の東日本大震災チャリティー寄席のトリで演った居残りが、私の人生で最高の居残りなんだけど、やっぱり円丈は「下地」じゃなく「醤油」なんだよね。白鳥さんが「好きでもない男に抱かれて病気になったり死んだり」と言うのを聴いてふと思い出した。
三三の方については、噺の内容が内容なので書けることも無し、ただ楽しかった!とだけ。そうそう一つ、白鳥さんのネタを演る時の三三は、高座に上る時のスピードがいつもより少し速いことに気付いた(笑)