二十才の微熱/渚のシンドバッド



キネカ大森にて、「恋人たち」公開記念・橋口亮輔特集の二本立てを観賞。


時間の都合で「渚のシンドバッド」→「二十才の微熱」の順に見た。93年制作の「二十才の微熱」に出てくるのが大学生、95年制作の「渚のシンドバッド」の登場人物が高校生というだけでもごっちゃになるのに、93年まで高校生でその年に上京して大学生になった私としては、懐かしいんだか何だか、わけが分からなくなってしまった(笑)ちなみに95年の浜崎あゆみの足元は90年頃の私の足元と一緒、92年頃にはルーズソックスの短いやつ(って矛盾する言い方だけど・笑)を履いていたものだ。


オゾンの「彼は秘密の女ともだち」を見た際、隣の人が始終笑っていたのが苦痛だったものだけど(映画の方にも少々がっかりした)、「渚のシンドバッド」の終盤、白いドレス姿の伊藤(岡田義徳)に向かって吉田(草野康太)が「何やってんだよ!」と言い放つ場面で近くの人が笑った時には私も楽しい気分だった。それは、「二十才の微熱」のこれも終盤、ベッドの中の宮島(遠藤雅)が自分を買った客(橋口監督)の「悪いけどホモなの!」に吹き出してしまう、あの感じに通じるところがあると思う。そこで完結しない、どこかへ向かう中途の笑い。


その後、客は、「渚のシンドバッド」の最後の浜辺で相原(浜崎あゆみ)がするように、両手で二人を抱え三人で抱き合おうとするが、島森(袴田吉彦)に「いきなりかよ!」とはねつけられる。そりゃあ急には無理だ、関わりを重ねない限りああいうことってできないものだ。二作とも、そういうことを描いているように思われた。ただし世代の違う(ゆえに「感覚」の違う)「客」がどうしようもなく「外」に居るかというとそうではなく、もしかしたら「今から」なのかもしれない、可能性はゼロではない、という雰囲気がある、そこが優しい。


「二十才の微熱」で島森が机を離れて本を取るためベッドに腰掛けると、テレビを見ていた宮島がもぞもぞと自分も横になってみせる。あれは単純に、ベッドがエロを連想させるからだよね。ああいうシーンって好き(笑)「渚のシンドバッド」では、吉田が天井のポスター(橋口監督は作中の人物が見ているものをこちらになかなか見せない、この時もそう)を取ろうと立ち上がると、伊藤の眼前に彼の、普段とは違う体の箇所がくる。カメラはそのままだから脚全体が画面におさまる。あの場面もエロい。


渚のシンドバッド」において、奸原が「優等生」の清水に私もタバコ、吸ってみようかなと言われた際に返す「大丈夫?」にはとても聞き覚えがあった。男の人が精一杯気を遣っている時の言い方。と思っていたら、次の場面で吉田が倒れた…あるいは倒した相原に言うそれはおざなりで怖くなった。吉田に「悪気」が無いのは分かる、でも「あれから人のぬくもりって信じない」と言っていた相原は、後に彼に手を掴まれた時もその思いを新たにしてしまったに違いない、彼の手はきっと熱いだろうから。


「二十才の微熱」のラストシーンは新宿駅南口付近だった。改装前のJRAとヴィクトリアが目印。新宿でも一番話題のエリアだけど、当時、私が上京する前は、今に比べたら何もなかった。知ってはいたけど、本当に。