トラッシュ! この街が輝く日まで




「こんなところじゃ皆から見えちゃうよ、テレビみたいに…」


逆光でよく見えない男の顔が露わになると(「エリート・スクワッド」のナシメント大佐役、ワグネル・モウラ)、目尻から流れたらちょうどこのあたりに涙が付着するだろう、というあたりにできものがある。こちらにはまだ得体の知れない彼のちょっとしたアクションの結果、財布がゴミ収集のトラックに運ばれていき、カメラが引くと、なんて長い長い共同住宅!場面替わって、軽快な音楽と共に「ゴミ漁り」が描かれる…というオープニングにはわくわくさせられた。
「おじさん」の前で手紙を暗唱するガルドの口元に書き手の声が被る場面や、ラファエルが「絶対にするなよ」と念を押す場面と仲間二人がまさにそのことばかりしてしまう場面とのフラッシュフォワード?など楽しげな演出が続くも、私の好みなんだろうけど、その輝きは、全体の筋が「正しく」通り過ぎているために鈍っているような感じを受けた。


少年達のアクションに次ぐアクションは、跳んでくぐって、ちょっとしたパルクールのよう。ふと昨年末に見た「チェイス!」を思い出した。そこでは暴力を受ける少年の身に「マジック」が備わることで、追手から華麗に逃げ得る。本作の少年達のアクションは、(「映画だから」ではなく)「神からの贈り物」と解釈しても面白い。
少年達が猪突猛進出来るのは「信仰心」ゆえでもある。「聖書」をぼんぼん投げ合っても、「神は貧乏人を助けてくれる」と心のどこかで、もしかしたらよすがとして、信じている。冒頭、ラファエルが連れ去られたと叩き起こされた神父(マーティン・シーン)は留置所に乗り込むが、酒に「溺れて」いる彼は足元も覚束ない。相当な剣幕で怒鳴るも何も解決はしないが、ガルドはいつもだらんと開いている彼のカラーを黙って留める。この場面がやけに印象的だった。


ラスト、神父とオリヴィア(ルーニー・マーラ)の会話「これをどうする?」「アップロードすれば皆が見る」。今や幾多の映画の「結末」に使われる手段が、この映画では特に、どこかの国などではなく「皆」に渡すことが「正しさ」を支えるという意味合いをもって感じられる(紙幣をばらまく場面とも多少の繋がりを感じる)。先にあげたセリフについて、少年達がyoutubeを知っていたなら、あの窓を「テレビ」に例えただろうか?あのくだりはとても面白いと思った。
ルーニー・マーラといえば、本作によって、私の天敵である彼女との間に多少の和解が成立した(笑)登場シーンが子ども達に英語を教えているところなので(まさか「動物ロト」に繋がるとは思わず・笑)、声がこれまでと違ったふうに聞こえたのも一役かったかな。「悪者」に迫られ見返す時の瞳には力があった。