リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド



マーティン・スコセッシによる、ジョージ・ハリスンについてのドキュメンタリー。
公開三日目、角川シネマ有楽町にて観賞。平日にも関わらずかなり混んでいた。


間に10分の休憩を挟んでの二部構成。長丁場でお尻が痛いけど面白かった。ジョージ本人の記録よりも、他人(押し出しいい人ばっか!)の映像や語りで彼の影や時代が浮かび上がるという作りに、ジョージってそういう人だったのかな、なんて思わせられた。
同居人は「My Sweet Lord」に関する裁判のくだりが省かれてるのを不満がってたけど、確かにそのことを含め、描かない部分はほんとに描かない。ナレーションも無し。全体的に、観やすくきれいな作りだなと思った。


物語の境目は「While My Guitar Gently Weeps」。話としては後半が面白いんだろうけど、始めの方のビートルズ初期の演奏シーンにはやはり心惹かれてしまう。加えてお馴染みの、建物の壁や窓に張り付いたり上ったりまでして近付こうとするファンの姿。ホテルの窓から群衆にカメラを向けるジョージのモノクロ映像の後に、実際のカラー写真が差し込まれるくだりとか、頭がシェイクされるようで気持ちいい。
それにしても前半は、産まれたばかりの子馬が走るようになるまでを見守るような感じだった。「お前の頭バンダナかよ!」と言われてたジョージが、「ぼくとリンゴはリムジンでもいつも後ろの席」を経て、曲を書くようになり(ポールの「作曲したほうがお金が入るようになるから」というコメントが可笑しい)、精神世界にのめりこんでいく。トークショーでハゲ&変な頭のおっさんから「体感なんて誰にでもできる、認知し説明することのほうが大事なんだ」と突っ込まれ、これまたオトナになったジョンより前に出て熱っぽく語る場面には、大きくなったねえ!なんて思わせられた。


後半は後半で、出てくる人が皆面白いから飽きない。パティ・ボイドがらみの話をするクラプトンに始まり、リベラーチェの格好をしたガマガエルみたいなフィル・スペクターが華を添える。終盤、夫人が「彼は最高に自分を高めて死んだ」とか何とか言うので、これから「終活」場面が続くのか〜眠くなってきたからやばいなと思ってたら、あっさり亡くなったので良かった。
それにしても、多忙な時期を経て神秘主義や庭づくりにはまるって、ただの「普通」のおっさんじゃないか?と思ってしまう。息子が言うには「散々いじった庭を、夜中に目を細めて眺めてるんだ、雑草なんかのアラが見えるのがイヤだったんだろうね」。実際のジョージの心情は分からないけど、印象的な言葉だった。