ファースター 怒りの銃弾



面白かった。とくに前半は、的確にツボ突かれてにやにやしっぱなし。
10年の刑期を終えて出所した男(ドウェイン・ジョンソン)が、兄と自分を陥れたやつらに復讐する話。邦題通り、ロック様が(肉弾じゃなく)「豆鉄砲」一つでガンガン敵をやっつける。


独房の中を歩き回って体を鍛えるロック様の姿に、ちょっと「パピヨン」を思い出したけど、その肉体はもちろん全然違う。出所したその足は、いつしか駆け出す。車(超目立つシボレー!)を手に入れると、猛スピードで走り出す。わくわくさせられるオープニング。
予告からは分からなかったけど、本作は「続・夕陽のガンマン」を下敷きにしている。「The Good, the Bad and the Ugly」に相当するのが、順は違うけど…というかそのへんは適当だけど(笑)「ドライバー」(ロック様)、「刑事」(ビリー・ボブ・ソーントン)、「殺し屋」(オリヴァー・ジャクソン・コーエン)の三人。それぞれの顔、というか目、とくにロック様の「時が止まった」目が様々な撮り方で強調されており、顔立ちのせいもあり?ドニー・イェンみたいに見えた。スローモーションや見栄が多いから「ジョン・ウーの映画の中のドニー」って感じ。


始めに「とくに前半は」と書いたのは、各々の登場や、初対面の場面などが面白いから。「世界で10人しかやれないヨガのポーズ」を制覇するナルシスティックな殺し屋、チェックのシャツに頭髪も寂しい薬漬けの刑事。ドライバーと殺し屋の初対面の場での、あの子ども!このシーンがジョン・ウーばりなら、ドライバーと刑事が顔を合わせるシーンの方はプロレスのショーのよう。
刑事の別居中の妻との息子は、例によってデブ。野球に送ってく車内で、父親が仕事の電話に「子どもと一緒だから遅れる」と言うと思わず笑みをこぼす。これに限らず、子どもの使い方がすごくあざといんだけど、嫌な感じはしない。
ラスト、肝心の「三つ巴」のくだりが少々緊張感に欠けるのが残念だったかな。


ドライバーのターゲット5人のキャラクターは、つまらないほど薄くはなく、話の邪魔になるほど濃くはない。彼らは10年の後それぞれの暮らしを築いているが、ドライバーは「人生を変えても過去は変わらない」とにべもない。刑事の妻の「天国や地獄は私たちがこの世で作るもの」というセリフが印象的だった。