カラフル


罪を犯して死んだ「ぼく」は、天使のような男の子に導かれ、自殺した少年マコトの体に入って現世に戻り「修行」することに。中学三年生の彼の自殺の原因は、母親の不倫と、思いを寄せる女生徒の援助交際を知ったことだという。



お話は面白く、終盤には多幸感、主人公のその後をもう少し見たくなる、後ろ髪ひかれる感じが味わえた。ミステリー的な展開も楽しい。小出しに出される情報…釣りに出かけるあたりの行動でもしかして、と思わされ、最後に唱子のセリフでやっぱりそうなんだ、と「ぼく」と共に確信する。
でも「ちょっとうざい」感もあり。最後、ダメ押しみたいにあんな「テーマ」めいたこと、つらつら言わなくたっていいだろうと思ってしまう。


(以下「ネタバレ」あり)


私がアニメを苦手な理由は、例えば何か悟ったような表情の人物に対して、絵のくせになまいきだ!と感じてしまうというのもあるし(笑)例えば画面の中の雲の切れ端ひとつ、電線ひとつにしても誰かの意志によって「存在してる」わけで、絵が「リアル」であればあるほど、想像力の余地をはぎとられたような、見方を押し付けられたような気持ちになってしまうから。とはいえ作品によるし、実写だってそうとも言えるから、何ともいえないけど…
閑話休題。だから微に入り細に入り「リアル」に描かれたこのアニメには、始めのうち乗れなかったんだけど、つらい目に遭って自殺した人に対して「修行」を与えるなんていう(本人に辛い記憶がなくても/結果的に「修行」じゃなくても)、私からすると「何者かが強引に采配を振るっている」ような世界の物語は、そういう絵のほうが観やすく、楽しめることに途中気付いた。


「ぼく」と早乙女くんが玉電の跡をたどりながら仲良くなるくだりが素晴らしい。いきなりそんなレトロ趣味、わざとらしいと思ったけど、長丁場のシーンは圧倒的。まるで、自分が「ぼく」になったような…ありえないけど「他人の体に入って、以前から『自分』のことを知ってはいるが喋ったことはないらしい相手と親しくなる」ってきっとこんな感じだろう、という気持ちにさせられた。


援助交際をする女生徒のキャラクターがエキセントリックでないのもよかった。彼女含め、登場人物の喋り方が自然で観易い。
ちなみに援助や不倫の相手の顔を出さないのは、「主観」を描く少女漫画的技法?みたいだなと思った(私にとってことわりなしの「少女漫画」とは岩館・大島ライン)。


ちょっと引っ掛かったのは、母親が家族全員のパンにバターを塗るシーン。まるで昔の日本の家庭で、母親が下手でごはんをよそって、皆がある程度食べるのを待ってるような感じ。「食事を作るのは母親の役目」というのは全然いいんだけど、ごはんをよそう、バターを塗るなどのserveっぽい感じのことを決まった人がするのには、何となく抵抗がある。まあ作中の母親は虐げられておどおどしてるから、それを助長する描写なのかな。