公開中の「座頭市 THE LAST」を観たのを機に、「座頭市」の映画化第一作(1962年・三隅研次監督)を観た。テレビドラマ版を観たことはあるけど、これは初めて。
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下総飯岡の貸元・助五郎のもとに草鞋を脱いだのは、ぼうずでめくらの通称「座頭市」(勝新太郎)。新興勢力の繁蔵と対立中の助五郎は、彼の剣の腕を当てにして長逗留を勧める。
釣りに出掛けた市は労咳持ちの浪人・平手造酒(天知茂)と知り合い、酒を酌み交わす仲になる。造酒は繁蔵の用心棒であった。
オープニング、丸太の橋をおっかなびっくり四つん這いで進む市。勝新の座頭市といえば超人ぽいイメージがあったので、キュートな姿に可笑しくなった。
何人、何十人を相手にばさばさ斬っていくということもない。客人の前で居合を見せるのは「気が乗らない」と断っていたのが、助五郎と子分が自分のことをあれこれ言う場にぬっと現れ「めくらだかたわだって言われるのはいいんです、その通りだから」「でもめくらの『くせに』ってのは許せない」と、蝋燭を縦真っ二つに斬ってみせる。これが作中初めて披露される、市の術。その後もここぞというときしか剣を抜かない。
物語のメインは市と造酒の交流。共に剣の達人ながら「ばかなやくざの喧嘩に巻き込まれるのはまっぴら」と思っている。しかし助五郎は子分たちに「面白い勝負が見られるぞ」と吹聴するし、繁蔵は友情を餌に造酒を出入りに引っ張り込む。「目明にばかにされるまい」と剣を手にした市が、何の因果か目明の都合で友を斬ることになる。
ラスト、二人だけの戦いが終わった後、静寂の後に盛り上がるやくざものたち。「同じ世界」を共有できた唯一の相手はもういない、寂寥感が強烈に漂う。
(かといって、二人がずっと付き合いを続ける図というのも想像できない。共に一人で生きる身なのだ。酒を酌み交わす場面において、既にそうしたはかなさが感じられる)
ちなみにこの作品の天知茂は、ちょっと平静に観てられないほどかっこいい。私にとっては「江戸川乱歩の人」で、いいと思ったことなんてなかったのに。
「やくざはきらわれもんだから、渡世の義理を通さなきゃ」
▼「座頭市 THE LAST」の感想は、twitter連携機能のテストも含めて、その日のtweetより。
ちなみに「座頭市物語」では勝新の耳がアップになる場面が幾度かあるけど、香取慎吾のほうはさらに「耳を動かす」という特技を披露していた。ドラマ版で勝新もやってたっけ?