人生に乾杯!


81歳のエミルと70歳のヘディは二人暮らし。年金だけでの生活は難しく、とうとう思い出のイヤリングまで手放すはめに。エミルは愛車のチャイカを飛ばし、強盗の旅に出る。



予告編やチラシからイメージするより、ずいぶんハードボイルドな映画だった(逆に言うなら、日本の予告編は、うまく切り取って「ほのぼの感」を出してるなと感心した・笑/画像はハンガリー本国のポスター)


冒頭、あれこれあってヘディが自宅の玄関を開けると、エミルは持病の腰を痛めて身動きとれずにいる。大きな容器から薬を出して塗ってやる。いきなり「年を取ることの大変さ」を見せつけられ、どきっとしてしまった。
彼等は二人だから、助け合って何とかやっている。しかし途中何度か、「二人」でいることの怖さを感じる場面もあった。ふとしたことで、どこかに帰りたくなる時だってあるけど、「二人」で生きていたんでは、帰る場所がない。あぐらをかいて、覚悟するしかない。


少なくともこの映画で見るハンガリーは、何もかもが古い。「誰もいない」銀行や、バンガローのしょぼさ。二人が泊まるホテルだって、室内はそれなりに充実してるのに、外観は素っ気ないマンションのようだ。また二人のニュースを流す「テレビ」が何度も出てくるけど、どれもこれも古い(ホテルのものなんてモノクロ!)。
ただ、「年金が少なくてお金が足りない」なんて大変だなあと思ったけど、自宅での食事シーンなどがないため生活感が伝わってこず、いまいちぴんとこなかった。


印象的だったのは、「セックスで男から金をとる女」が何度も出てくること。まずは冒頭、「男の集まり」に呼ばれて仕事をこなすストリッパー(このシーンが妙に長い)、次に一仕事終えてモーテルの前に車を泊めたエミルに「15なんとか(これが幾らくらいなのか?知りたかった・笑)で90分」と話をもちかけてくる売春婦、最後に二人が泊まったホテルのプールサイドで「男の人はマッサージが好き」と声をかけてくるアジア系の女性。そして、いずれの場合も一応、男の方に気がないという結果になる。何か示唆的なものを感じた。