潜水艦映画


「真夏のオリオン」の小説版を読む前にと、日本の潜水艦映画を借りてきた。潜水艦ものは大好きだから、外国のは色々観てるど、邦画はまだ知らないのがいっぱいありそう。


人間魚雷 回天 [DVD]

人間魚雷 回天 [DVD]


55年、松林宗恵監督作品。観るのは初めて。
冒頭から、人間魚雷の爆破実験の見学や訓練中の死亡事故など悲惨な場面が続くけど、ドラマチックな感じはなく、淡々と話が進む。回想シーンなどない硬派な作りが好み。唯一の「夢」シーンが愛らしい。
「あいつは坊さんだが、何千人もぶっとばすんだから地獄行きだろう」「(「軍神」と呼ばれたことに対し)化けの皮がはがれないうちに神になっちまおう」など、随所に見られる隊員たちのユーモアが印象的。魚雷内部の様子が多く見られるので、その操作の困難さもよく分かる。
遊郭のシーンでは、「近いうちに死ぬ」と分かっている人間とセックスするのってどういう気持ちだろう?と思った(「ラスト、コーション」を観たときにも思ったこと)。


潜水艦イ-57降伏せず [DVD]

潜水艦イ-57降伏せず [DVD]


59年、同松林監督作品。こっちは再見。イ‐57号のロードムービーって感じで、さっさと話が進むから楽しい。上意下達で何でも済んじゃうし、躊躇すれば上官に殴られて終わり、だからってのもあるかな(笑)
艦内での緊迫したシーンは(他の映画に比べたら)少ないけど、私が大好きな、艦が浮上したり潜水したりする際の水面を映したカットが多くて嬉しい。「船に揺られてると思うから気持ち悪くなるんだ、揺らしてると思え」というのは名言(笑)
冒頭の人間魚雷発射のシーンはちょっと唐突に感じられるけど、この時期が舞台の日本の潜水艦作品にはつきものの要素なのかな?


これらの作品では、個人的な会話以外、隊員は名前で呼ばれず「貴様」で済まされることが多い。
「イ‐57号」の艦長の池部良は出征前に「散る桜/残る桜も/散る桜」と詠むし、三橋達也は「戦争は勝つか死ぬかだ」と言い切る。
「真夏のオリオン」のテーマは「生きて帰るために戦う」というものだけど、いま戦争映画を作るのに、当時の人間の感覚を想像して盛り込むのと、今の観客に伝えたいことを直接言わせてしまうのと、どっちもやり方によっては面白いと思う。


「近年の戦争映画に出てくる役者は軍人ぽくない」という不満を聞いたことがあるけど、昔だって色んなルックスの人がいたんだから、そんなに変わらないだろう、とあらためて思った。岡田英次はかっこよかった。
とはいえ、「真夏のオリオン」の一場面を見て強く印象に残ったのは、吉田栄作って、十数年前は美男子すぎて画面から浮いてたものだけど、今じゃあ(年をとったからというのもあるけど、それを抜きにしても)全然浮いてないってこと。俳優さんのルックスのレベルが高くなった…というか均等化?が進んだんだなあ。