女工哀歌(エレジー)


シアター・イメージフォーラムにて観賞。


中国・広東省ジーンズ工場で働く少女の日常を描いたドキュメンタリー。
時給0・5元(約7円)で、納期前ともなれば午前3時まで働きづめ。工場を抜け出して向かう先は、倒れないよう「死ぬほど苦い」漢方茶の立ち飲み。長引く給料未払いに対し、14歳の仲間が先頭になり社長に立ち向かう。



これは面白かった。第一に、不謹慎ながら、刑務所もの・戦争ものなど、限られた不自由な世界が舞台の映画として楽しい。だって家畜並みなのだ。持参のバケツで洗濯をする姿に「自分でやるのか〜」と思っていたら、話が進むにつれてそれどころじゃないことが分かる。
それに、主人公・ジャスミンが都会へ発つシーンに始まり、故郷の話を織り交ぜながら工場に慣れていく様子が描かれるという構成が分かりやすく観易い。仲間の少女たち(ほとんどは16歳の彼女より年下)のエピソードも味わいぶかい。
ある先輩とその恋人、ハタチを前にしながら日本人からすると子どものような顔付きのカップルの、他愛ない会話も面白かった。モデルのランウェイを真似、ディスコに出かける彼女の、安っぽいふわふわの洋服にぐっとくる。顔はというと、眉の手入れもせずそのままだ。アジアの女性って、素のままだとああなんだよなあと思った。


女の子たちは一見仲がよく、スキンシップも多い。ああいうところでは苛めや派閥なんてないのかな?忙しいのでそれどころじゃないかな。
皆、髪は長い。美容院どころか、給料から天引きされる「お湯代」を節約するため、ジャスミンは洗髪も控えている。
初めてお金を手にした日、友達と連れ立って夜の町へ出る。彼女たちは路上の夜店でものを買う。ふと、以前NHKのドキュメンタリーで見た、過疎地の巨大スーパーにやってくる外国人労働者の女の子たちの姿を思い出した。



「私の作ったジーンズ、どんな人が履くんだろう?」


ジャスミンは、疲れ切った体でもノートに物語を綴らずにいられない女の子。だからこんなことを想像するんだろうか?それとも他の子も、少しはそういうことを考えるんだろうか?
映画の最後には、そのジーンズの行く先が示されている。


工場には、他にも多くの人々が働いている。ホワイトカラーの女性もいれば、少女たちの「2枚目」のタイムカードを押す仕事も兼ねる警備員、お湯を汲むおじさんなど。彼等はどの程度の給料をもらい、どういう生活をしているのか、気になった。


映画は工場の社長・ラム氏の日常も描く。元警察署長の彼は、書道を嗜み工場内に直筆のスローガンを貼る。ホテルのこじんまりした部屋で、ネクタイはせず、通訳を介して商談をする。物事はあんなふうに決まる。
同行者は「あれは犯罪者だ」と言っていた。



「いちばん大変なのは、労働者を管理すること
 皆に言うんだ、もし君が私だったら、違った考え方をするだろうって」


観ている間、ナレーションがジャスミン本人のものなら、声入れはどうやって行ったんだろう?もし本人ならば、美味しいものでも食べて少しはゆっくりできたのかな、と思っていたら、ラストに諸事情により「吹き替え」の旨が記されていた。