気乗りのしない革命家/イエメン:子どもたちと戦争

イスラーム映画祭4にて、セットで上映されている二作を観賞。


▼「気乗りのしない革命家」(2012年イギリス/ショーン・マカリスター監督)は道にばらまれた石に「ファックオフ、タリバン!」とののしり声をあげる男性に始まる。彼はイギリス人ジャーナリストである監督が雇ったイエメン人ガイドのカイス。構えたばかりのホテルが「アラブの春」の余波を受け経営難に陥り、今は「東欧からの無謀な観光客相手に生計を立てている」。

弟いわく「大統領は33年寝たままだけど兄もそう、そろそろ起きなきゃ」。親大統領派のカイスは「このままでは血が流れるどころか血のプールができる」「大統領は話し合いを望んでいる」と構えているが、変革の広場を訪れるうち心境に変化が起きる。このドキュメンタリーの素晴らしいのはまず反政府デモをする人々を捉えた映像。若者の革命だということ、男女でしっかり分かれてはいるが女達も堂々と活動していることが分かる。カイスは次第に「政府はこちらを恐れている」と革命側に感情移入し始め、国による殺人を目撃した後には「背中を押してくれてありがとう」と口にする。

カイスが「この金曜日に何かが起こる」と言う前夜、監督は自身の息子と話をする。少年(というにもまだ幼い)いわく「することがない人はそこにいちゃだめだ」。翌日、監督は記者として出向き映像を撮り人々の声を聞く。当初「君は変革の広場の初めてのツーリストだ」と言っていた、すなわち観光客相手に仕事をしていると考えていたカイスが、その時にはジャーナリストにメッセージを託す現地の人間となっていた。


▼「気乗りのしない革命家」の終盤、墓地で男性が「イエメンには死ぬ運命の子どももいる」と話していたが、その子ども達に焦点を当てて制作されたのが「イエメン:子どもたちと戦争」(2018年フランス/ハディージャ・アル=サラーミー監督)。「私のイエメンは破壊された」との女性監督のナレーションとその光景に始まる。

彼女が知り合った三人の子が人々にインタビューを行う。相手は祖母に始まり画家、風刺作家、ラッパーと様々で、最後に病院と難民キャンプを訪れる。彼らが撮影した動画も挿入されるが、基本的には監督がインタビューのお膳立てから撮影までを行う形で、按排が丁度いい。合間の芝居も効いており、「Miss War」(とは他者が彼女につけた名だが)の「演出を施した写真」に通じるような気もした。

三人のうち長男は空爆が始まって3ヶ月学校を休んでいる間に勉学が遅れたこともあり、家の中で銃を手に暴れてばかりいたのが、作中では銃を手離すようになってきた。インタビューにはそうした作用もあったのだと思う。訪ねた先の画家の女性に「イエメンの男は山を切り開いて文明を作ってきたのだから銃は離しなさい」と言われもしていた。

平日の記録


渋谷にしかないちょっとしたもの。
モロゾフ東横のれん街店限定のプリンロールケーキはスポンジケーキ、カスタードクリーム、カラメルゼリーに生クリームという全部乗せスイーツ。懐かしめの味わい。
VELUDO COFFEE-KANという名の渋谷にしかない珈琲館ではトラディショナル・ホットケーキ。カウンターのすぐ向こうの鉄板で焼いてくれる。通常の店舗より一回り小さいのがおやつとしてありがたい。


これもちょっとしたご当地パン。
高田馬場での空き時間に入ったデリフランスで店舗限定の馬場あんぱん。生クリーム入りで食べやすい。
フードショーのアンデルセンではハチ公あんぱん。こちらは私の苦手な白玉入りで困った(笑)

キャプテン・マーベル


(以下少々「ネタバレ」あり)

映画はヴァース(ブリー・ラーソン)と彼女に「疑念、感情、ユーモア」を持つことを禁じる司令官ヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)に始まる。女が自分よりも下にいる限りは有効に使ってやろうというこの男、最後に手を差し出されて自らも伸ばす姿に「仲直り」して「元に戻る」ことが出来ると考えているのが透けて見え、何て呑気な恥知らずだと思う。尤も冒頭の二人の様子には確かに楽しさも感じられ、結末を踏まえても、彼の方こそ彼女によって幾らかのいわば遊びを与えられていた、救われていたのではないかと考えた。
それと対照的なのが初対面時から諧謔あふれるやりとりを交わすキャロル・ダンヴァース(ラーソン)とフューリー(サミュエル・L・ジャクソン)。部下のコールソン(クラーク・グレッグ)について「命令より直感を信じた、それが人間らしさだ」と話す彼は、勿論!彼女に対してもそれを適用する。コックピットにあふれる笑い。

この映画で素晴らしいのはラーソン演じる主人公の顔である。これまでなら女のこんな顔、ましてやスクリーンでなんてと封じられていた「普通」の表情ががんがん見られる。まず楽しいのは逆さ吊りに始まるスクラル人との一戦で、声で威嚇されれば威嚇し返す、邪魔な物が取れれば歓喜する、昔の漫画なら「ふんがー」とセリフにありそうで全てが最高に楽しい(まあベン・メンデルソーン演じるタロスが言うように「二十人を倒し(殺し)」ているわけだけども)。
地球に落ちてきてほどなく中年男性に「Smile for me」と言われるくだりは本作の最重要シーンである。てめえに見せるための顔じゃない、奪い返して走り出せ。

それにしてもアメリカ人はパイロットというか空軍が好きだよなあと思いながら見ていたら(イアハートのコスプレからも分かるように、女にとって空を飛ぶことにはそれ以上の意味があるわけだけども)、仲間のマリアが「あなたは人命が救えるならと出て行った、あの時にヒーローになった」とヒーローの何たるかを教えてくれる。彼女のこの映画での補助線ぶりはあまりに強力で、時に笑ってしまうほどだ。
「人類のオス、危険度ゼロ」と判定されたフューリーがマリアの方を見て「壊れてるんじゃないか?」と言うところでふと、そういやこの二人は同じ「人種」だと気付く。種類が増えれば増えるほど、誰が何でもどうでもよくなる。やっぱりそういうのがいい。

週末の記録


作ってもらった、喫茶店みたいな夕ご飯。
土曜の夜はナポリタン。買い置きしてある専用の極太パスタに白ワインをふったソースが合って美味。レタスとゆで卵のサラダは私が作った。
日曜の夜は私の大好きな鯖缶とトマト缶のカレー。この日も卵を担ったけど失敗した。

ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡


ドキュメンタリーは「The Jean Genie」とフレディ・マーキュリー追悼公演での「All The Young Dudes」という見慣れた映像に始まるが、その直前のボウイの「ミック・ロンソンは収録よりもライブの時の方がずっとワイルドだった」との語りでこれまでと少し違って受け取れる。その後もそういえばそうだなあということばかり、だってロンソンの仕事の結果はもう私達の体に染み付いているんだから。

The Whoの「Baba O'Riley」にのせて二人が出会った頃のロンドンが映し出されるのに、「DAVID BOWIE is」等で知るボウイの生い立ちを思う。彼がしつらえた舞台に「ミュージシャンなんて排出されない」ハルの長屋に育ち芝生を刈っていたロンソンがやってくる。「何かで名をあげたかった、故郷に戻りたくなかった」と語る彼とボウイとを比べてしまった。どちらがどうというんじゃない、異なる二人。

ボウイが注目を集める手段として同性愛を利用したと幾人かが述べるが、私もそう考えている。当時最先端の社会運動だったのかもと考えてもいる。映画が彼の「スパイダーズの三人は間違いなく当時最高のトリオだった」で締められるのに、そうだ、ボウイは常にその時々の最先端を作って渡り歩いてきたんだと改めて思った。面白いのは…あるいはそうだろうなと思わされるのは、彼が世間から攻撃されることを恐れつつ最先端を歩いていたのに対し、アンジーによればロンソンの方は「純朴ぶってただけで別に(非難されることを)気にしていなかった」というところ。

ジョー・エリオットの「(ボウイとの仕事において)ロンソンはプロデューサーとして名前を出されることはなかった」あたりでイアン・ハンターとのツーショットが挿入され、モット・ザ・フープルへの加入の話と至る。ミュージシャンとしてのロンソンの物語では、ハンターが初めて登場するのはモット・ザ・フープルが解散の危機に瀕した時である。以前読んだインタビュー記事によると彼はギタリストを探す必要に駆られるまで親友であるロンソンのステージを見たことがなかったそうだが、このドキュメンタリーからも、二人はどちらかが弱ると組んでいるような印象を受ける(「印象を与える」程度の描き方に留めているのがこの作品のよいところである)。それでもって楽しくかっこよく活動できるというのがいい。

話が晩年に及ぶと、とりわけ身近な人の話においては、ロンソンが金銭的に困窮していたことが強調される。「美容師と庭師のカップルで印税の知識もなかった」と自分達を語る妻のスージーの口からハンターは金払いがよかったとの言葉が聞けたのが面白かった、そうなんじゃないかと想像していたから。ロンソンが「イアンはいい奴でうまがあった」と言う理由にはそれも含まれているんだろう。それにしても彼女の「モリッシーは最後の上客」という言葉が心に残ること、お金、お金の話でもあった。

平日の記録


大きくてお腹いっぱいになったもの。
西銀座デパートのブリッヂで初めて注文したスノーホワイトパンケーキ。かかっているソースはヨーグルトと生クリームのミックスで、添えてあるはちみつと合うような合わないような。まあ味を求める店じゃない。
珈琲貴族では小腹というより中腹位が空いていたのでハーフサンドセットを頼んでみたら半分とは思えない量が来た上に、セットに選んだミルフィーユも超でかい。コーヒーをおかわりしてゆっくり食べた。