ラブ・パンチ



エマ・トンプソンピアース・ブロスナンにセリア・イムリー&ティモシー・スポールも加わっての英国&アイルランド勢がパリでどたばた、「アメリカ人」にも化けるよ、という中年観光映画。スリルのかけらも無い犯罪ものだけど、作中ブロスナンが「今は『緩い』のが好き」と言っちゃうくらいだから、これでいいの(笑)
ダイヤモンド・イン・パラダイス」を今は亡き新宿ピカデリー4、そして本作をシネマート新宿2で見られて、皮肉じゃなくブロスナン好きとしては嬉しい。いいんだよあれで(と思える映画だってある・笑)


監督はエマ・トンプソンと組んで「新しい人生のはじめかた」を撮ったジョエル・ホプキンスアメリカとイギリスの違い…とは特に思わないけど、例えばナンシー・マイヤーズ映画におけるダイアン・キートンメリル・ストリープが、全篇見た目からして素敵!(私にとって、ナンシー&メリルの「恋するベーカリー」以上の「元夫婦」映画は無い)というのと少し違い、エマだってブロンドのショートヘアに小奇麗な衣装が似合って美しいけれど、パリに行くという段になって地味な格好に。それがレンタカーのハンドルを握っているうちに活き活きしてくる。アウトドア後の大荒れの顔も見せるけど、喋ると愛らしい。話は大して面白くなくとも、エマの演技で魅せるのが楽しい。
ブロスナンだって老けたけど、彼はいつまでも私のスクリーンの恋人だから!エマいわく「憎いほどハンサム」というのが変じゃない。回転扉のスピードに合わせてちょこちょこ歩く姿がキュートすぎる。ドアを開けて入るとか、ケースを持って歩くとか、何でもない仕草は若い頃のままに美しく、要所の年寄描写で笑いを取る。スターはこうじゃなきゃ(笑)


年明けに公開される「スパイ・レジェンド」ではおそらく銃を持って駆け回るんだろうけど、このくらいの小品の方が、「あのボンドが!」と気楽に見ることが出来る…ような気がする。作中一度だけブロスナンが銃を手にする場面があり、顔の横に構えるボンドのポーズを取ってくれるのが嬉しい。でもその後、ホテルの小さな部屋に戻ると、あ〜くたびれたとベッドに横になり朝まで寝ちゃうという(笑)その他、明らかにジョン・バリーふうの曲をバックに4人がえっちらおっちら崖を上るシーンなど。ちなみにもう公開も終わるので書いちゃうけど、この映画で唯一洒落てるなと思ったのは、ブロスナンではなく実はティモシー・スポールの方が「かつてスパイだった」(のではないか?とも取れる)というオチ。
そうそう、技術名が分からないけど、オープニングが「黒い円」で始まるの、私にとってはあれはボンド映画なんだよね。でもってちょこっと「ドクター・ノオ」っぽいクレジットタイトル…って全部コネリーボンドか(笑・ちなみに私はもうクレイグボンド以外はキツくて見られず、ブロスナンがぎりぎりだと感じている。ガジェットじゃなくキャラクターの話ね)


それにしても「Me and Mrs. Jones」の使い方の史上最悪にダサいこと。こんな重い曲、却って軽く流さなきゃダメなのに、ここ一番ってとこで来るんだもん(笑・使用例としては「ビューティフル・ガールズ」「ブリジット・ジョーンズの日記」など、私がすてきだと思うのは「プルートで朝食を」)