最強のふたり



公開二日目、新宿武蔵野館にて観賞。首から下が麻痺した大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)と、介護人として雇った黒人青年ドリス(オマール・シー)との交流を描く。


冒頭、フィリップを車に乗せたドリスはハンドルを指でとんとんやっているが、痺れを切らし、何もかもを追い抜いて走り出す。その疾走感。これは時間的には物語の終盤に当たり、その後、話は二人の出会いに戻る。カバーをかけたままのマセラティをドリスが見付けてフィリップと出掛けるのをはじめ、「時速12キロ」まで出せるように改造させた電動車椅子、そしてパラグライダーと、「乗り物」の快感が印象的だった。フィリップは元々「それ」が好きだったんだろう、ドリスが取り戻してくれたから、二人は仲良くなったのだ。


主役二人とも、黒目より白目に情感があふれてるように感じられた。ドリス役のオマール・シーは「ミックマック」に出てたそうだけど覚えておらず。大きな体と顔の造作に笑顔が愛らしく、パーティの際の正装は、今年一番のスーツ姿になりそうな勢い。
彼らのやりとりに反応する秘書二人のちょっとした表情も見応えあった。どちらも個性があり魅力的、とくに垂れパンダみたいなイヴォンヌとドリスの場面はどれも楽しい。パーティの時に白いドレス着て、エクレア食べてたのがよかった。


後任者だって一応頑張ってるのに、コミュニケーション取らずにぷいと出て行ってしまうなんて、フィリップにも子どもっぽいところがあるのがいい。何が絶対というわけじゃなく、二人はただ気が合った。 恋愛は素晴らしい、というのも「絶対」じゃないけど、始めの方でフィリップが冗談混じりに「辛い時には女性なんていいね」と言う場面があることで、ドリスも勝手にお節介焼いてるわけじゃないと分かる。


これだけ書いた後に何だけど、「実話を元にした」映画を観るたび、世の中には面白い話がたくさんあるなあ!と思うものだけど、本作の場合、観終わって、えっこれに使っちゃったらもうこの話、他の映画に出来ないじゃんと思ってしまった。なんだか物足りず。出来すぎというか、お利口な感じが合わなかったのかな。