ヘッドハンター



これは面白い!今年一番の「犬がかわいそうな目に遭う映画」だけど、犬好きな私でも、あの絵面には全然笑ってしまった。ヘッドハンター兼・絵画泥棒の男が目を付けた「最後の獲物」は、本物の「ヘッドハンター」(首狩人)だった。


(以下、観る予定のある方は読まない方がいいかも)


物語は主人公ロジャーの「僕は168センチ」というナレーションで始まり、終わる。彼のちびであるという劣等感が最後には解消される。職業柄の「人を見る目」のおかげで助かりもするが、身近な妻の気持ちは見抜けていなかった、という話でもある(笑)
女を金でつなぎとめている(と思っている)ちびとはげが、その金を捻出するためにいけめんから財産を奪おうとするも、えらい返り討ちに遭う…んだけど、いけめんはあまり姿を現さず、ロジャーが一人あたふた逃げ惑うことで、何とも言えず可笑しな空気が流れる。それが出来るのは「追跡装置」という設定のおかげ。しかし、例えばロジャーが車で逃げようとすると追いかけられ窓ガラスを割られるという場面があるんだけど、こういう「偏執的」な追手って、美女やそれこそ怪物的な容姿の者であることが多いから、美男というのは新鮮で面白かった。


冒頭、ロジャーはオフィスに飾った絵画を前に「物事の価値は『評価』で決まる」と一席ぶつ。彼のポリシーを示す一幕かと思いきや、ちゃんと泥棒仕事につながってるという展開にわくわくさせられる。
猫が飛び出してくる、人が横切るなどの単純なことによるスリルがいい。話の展開も、紋切り型じゃないけど突飛でもなく、観ていて何ともしっくりくる。相棒が死んでると思いやっとのことで「始末」したら…のくだりなど、とても面白かった。双子のハンプティ・ダンプティみたいな警官も最高(最近特に、双子ぽいキャラクターが出てくる映画が多いよなあと思う)。
豪邸で音楽を流しながら夫婦で向かい合って食事をするという、世界中の人が羨みそうなひとコマ…そこで妻の不貞を問い詰めた時から、彼はおちにおちてゆく。くそや血にまみれ、這いずり回り、最後には丸坊主に裸で妻に「本心」を告げる。このあたりから予感にもぞもぞしてたら、クライマックスで愛が云々などと言い出すのでちょっとびっくりしたけど、そういう呑気なところも含め、愛すべき一本という感じ。まあ私はいけめんを応援してたし、もっとハードボイルドな方が好みだけど(笑)


「家中に銃を置いている」相棒が電話の向こうで女と遊んでるのを始め(この場面が「恋のからさわぎ」のペンキボール?デートに匹敵するくらい楽しそう・笑)、銃の使い方が面白い。ロジャーは始め銃を嫌っているが、次第にそんなことを言っていられなくなる。股間からの発射や女によって使い物にならなくされるなど、色々深読みも出来るけど、そこまでしたら野暮だな(笑)