日輪の遺産


(現在上映中の戦争を扱った日本映画なら「一枚のハガキ」の方がずっと面白かったけど、日記に書くのはこっち…そんなものだ・笑)


浅田次郎による原作は未読。終戦間近の昭和20年、陸軍トップは日本復興のためにマッカーサーの財宝を奪取。3人の男と、それとは知らず動員された一人の教師、20名の少女たちが隠匿作業にあたることになる。



真柴少佐(堺雅人)と小泉中尉(福士誠治)は任務の全貌を知らされておらず、「ありえない」軍服姿の男からあそこへ行け、ここへ行けとその都度指令を受け取って動く。「きょうはなんのひ?」ごっこのようで面白い。そもそもこの話、題材が「マッカーサーの財宝」だからか、どことなくファンタジックな感じが漂っている。「国鉄南武線」でどこをどうやってか到着しているお宝、火を付けると跡形もなく消える指令のメモ。
後に結婚すると分かっている少女(「現在」では八千草薫)と望月曹長中村獅童)を見守るのも楽しい。級長である彼女が皆が入った後の風呂を洗っているところへ、玉音放送を聴きたくない曹長がやってくる。切っ掛けなんてこんなものだ。私があの環境下にいたら、若い男ってだけで意識してしまってしょうがないけど、彼女はさわやかなもの。
もっとも二人はその後、否応無く、切っても切れないつながりを持つはめになる。曹長いわく「軍人は、戦争が終わったら、罪もなく傷ついた人を守ってやらねば」。「現在」の彼女は「秘密を一人で抱え続けるなんてできなかった」と告白する。私としては本作で描かれる物語よりも、二人のその後の何十年ものほうがずっと興味ぶかい。
ちなみに中村獅童のみ、作中「いくさ」という言葉を何度か使うんだけど、似合ってて笑える。


…というふうに「本筋」は結構面白いんだけど、「現在」パートがとにかくたるい。何たって「回想する老人」が二人も出てくるんだから。日米双方の視点から…というのは分かるけど、どっちの話もそう聞きたくない。
また「本筋」においては重要なところをわざと見せない抑えた演出をしており、そこが好みなのに、「現在」ではセリフによる煩い説明がてんこもり。麻生久美子の「私にも見える」アピールには驚いた。
その他、例えば話の導入となる「石碑」のつるつる具合とか、キーとなる「肉筆」が(誰が書いたやつでも)みな同じような感じだとか、そういう部分がいちいち引っ掛かる。とどめに雑極まりない妊娠の扱い。


静かな映画だから、思いがけないアクションシーンがいいアクセントになっている。脚の悪い中村獅童によるスーツケースを使っての立ち回りと、終盤の堺雅人の一撃。映画全体では中村獅童の方がいいけど、アクションに関しては堺雅人の方がキレがいい。実戦経験がなく、中盤では人命を天秤にかけてしまったことを思い悩む彼が、この場面では迷いなしに行動する。
教師役のユースケが私は苦手なので、彼の第一声(もうちょっとでお昼ごはんだぞ、とか何とか)にちゃんと喋れよ〜と脱力するも、その後は役に合っていた。