
「ドラゴンじゃなく獅子」と後で息子二人(車の後部座席の片側にくっついて座っている)に訂正される行事の会場の隅にぼんやり腰かける、居場所のない男アレックス(ウィル・アーネット)。それがひょんなことからコメディクラブで喋って居場所を得る。私はいわゆるシスヘテロ男性のスタンダップはもう殆ど見ないけど、もしやるならテーマは自虐じゃなく愛なんだ、それが自身をも救うんだという話だった。
昔から面白かったもんなと周囲に言われるアレックスは元よりお笑いに向いている。オリンピックに出た程のバレーボール選手でありながら引退していた別居中の妻テス(ローラ・ダーン)はコーチとして復帰する。大人の関係はそれぞれの居場所があってこそという話だとも言える(『しあわせな選択』(2025年韓国)のヨム・ヘランとイ・ソンミンはそれゆえ逆にうまくいかなかった二人である)。
やるぞと決めての二度目のステージでは、自身の幼少時の思い出…理不尽な仕打ちを受けたことにつき「まるで…みたいだ」と例えて笑いをさらう。スタンダップでよく見る(アメリカ人がよくやる?)笑いの取り方だ。それが次第に周囲を踏み付けるものになり、最後には怒りをぶちまけるだけとなり、見ていた父親(キアラン・ハインズ)の帰り際の一言は「次はジョークを言えよ」。
男が悪気なく女を傷つける場面がやたらリアルなのが面白い。急な出演依頼を受けたアレックスに息子達を預けにこられた、自身は当初より予定を入れていたテスの「私が二人を嫌がってるみたいじゃない」。「全盛時」の自分の試合での後ろ姿の写真を引き伸ばして飾っていると揚々と言われての「今の私じゃない」「顔が見えない」。
アレックスのステージを見たテスが「セクシーだった」、ボールズ(ブラッドリー・クーパー)いわく「帽子をかぶるとセクシーだとクリスティーン(アンドラ・デイ)に言われた」、アレックスの母親(クリスティーン・エバーソール)の「私は移民の男が好きだから(夫とうまくいった…実際はセラピーを受けるなどしていたわけだが)」、女性にとって男性と一緒にいることのとっかかりに性的魅力があるとしているのが面白い。復縁映画といえばナンシー・マイヤーズの『恋するベーカリー』(2009年アメリカ)のアレック・ボールドウィンも全裸でかわいこぶってたな、それくらいじゃないとより、戻さないよなと考えた。