ロンリー・アイランド


コミュニティシネマフェスティバル「日韓映画館の旅」にて観賞、2023年キム・ミヨン監督作品。

繁盛店でちゃっちゃと食事を済ませ鏡の汚れた車でスタジオへ帰るユンチョル(パク・ジョンファン)を追うカメラは、並行する道へと離れ少し行ったところで振り返る。娘ジナ(イ・ヨン)からの連絡で学校へ行くと男だ男だと騒ぐ女子生徒の中から一人、ジナの友人ヨンヒが飛んでくる。ユンチョルは彼女の謝罪を聞いて「自作自演で炎上か」、教師の説明を聞いて「作品を処分したんですね」、何でも勝手に要約、解釈してしまう。これはいわゆる「ダメな男を優しく見守る映画」と言えるけど、この類のダメさも視点もこれまでにあまりないもので新鮮…な反面、主人公の造形の面白さばかり感じながら見る映画とは面白いのかと思いながら見始めた。

「私はパパと似てるみたい、ママは友だちも多いしお金も稼ぐけど」とジナは言うが、ユンチョルには彼女がタトゥーを消す理由が分からない。変化に労力を掛ける必要性が理解できない。かつての自分のように美術の道を進むと見えたジナの出家宣言を彼は「自分が行かなかった幻の道」と捉えるが、坊主頭の彼女が最初に映るカットは確かに一瞬夢のようだ。後にユンチョルは恋人のヨンジ(カン・ギョンホン)に「他人も皆思い通りになると思わないで」と言われるが、これはオープニングのカメラのように、自分の歩いている道が他人のそれとは違うと体感するまでの物語に私には見えた。その切っ掛けをくれるのが、父親や親友といった自分とずっと一緒にいてくれると言う相手を好きなまま違う道を行こうとするジナである。彼女を追って来るヨンヒとの場面にはクィアな空気もありぐっときた。

ひょんなことからスタジオに入れなかった日、ユンチョルはそのまま車を飛ばして…いったん死んで生き返る。終盤ジナが「何が大事かは死ぬことを考えると分かる」と言う時、この場面が蘇る。自分も髪を刈った彼があれこれやってみる、ここから映画はオフビートなコメディの様相で面白くなる。ママに料理を作ってあげればよかったのに、と言われて(元妻にはそんなことをする機会はないので)クグスの店を始める。客が来ないなら近所の人に挨拶してみれば、と言われて応答してみる。結局のところ彼のクグス屋に客は来ないが、何でもないかのように店を閉めて一人帰る後ろ姿のラストシーンは、最初の時からこんなにも遠くに来たのだと実感させる。