アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし


(少々「ネタバレ」しています)

「その唇を閉じて黙ってくれ、ぼくが君のけがれのない体を味わえるように…」というくそみたいな詩に洗脳されている王国では、書き手の王子との結婚が「女の夢」。しかしこの映画に出てくる、互いに楽しんでセックスしているカップル(示唆含め)は全て婚姻の外にあるんだから面白い。その筆頭が後に王子と結婚する「シンデレラ」ことアグネスなので、くそみたいな詩は実際馬鹿馬鹿しいものとして話が終わる。このシンデレラならその後も見てみたい。姉妹が「国境を越えて逃げる」ラストには、最近他にもそういう映画を見たと思った。「国」の外に何があるか分からないけれど、それしかない。

王子との結婚を夢見る主人公エルヴィラ(リア・マイレン)、男の手を取らない妹アルマ、エルヴィラに歯の矯正具を隠すよう言う母レベッカ(アーネ・ダール・トルプ)と違う類の女三人が屋敷に到着、食卓で母の再婚相手のくそ登場、くそ死亡というテンポよくわくわくさせられるアヴァンタイトルに続き、俗な言い方をすれば奴隷製造社会を生きる様々な人々が映し出される、それこそハープ弾きの少年まで。権力にのって利益を得んとする美容医師(?)の「美は痛みを伴う」もそうだが淑女学校のミス・ソフィーの「内面の美しさに合わせて外見を変えるなんて勇敢だ」は今の脱毛や痩身の広告にあふれる「自分らしく」的宣伝文句と同じだ。

冒頭、馬車から降りたエルヴィラはアグネスを見て表情を変えるが私にはその理由が分からなかった…というか「シンデレラは美しい」という通念でもってしか理由が分からなかった。「美」は今の私には認識できない。アグネスは花嫁候補を集めた舞踏会にベールを被ってくるので顔は見えない(いずれかの話が元々そうなのかな?私が幼少時に読んだのは『サンドリヨン』の絵本)。男達が色めき立つ「おっぱい」も見えない。しかし王子は何故だか吸い寄せられる、美なんてそんなものなのかもしれない。この後エルヴィラとアグネスがダンス中に互いの顔を見てしまう場面が面白い。私としてはエルヴィラ、アルマ、アグネスの三人共に親しみというか好感を覚える、辛く痛い話ではあるけど楽しい映画だった。