100リットルのゴールド


フィンランド映画祭にて観賞。2024年フィンランド・イタリア・デンマーク、テーム・ニッキ脚本監督作品。

堂々たる中年女が二人、田舎の一軒屋でアートに歌とめいめいの部屋でめいめいのことをしているオープニングに心掴まれる。ピルッコ(2023年の同映画祭で一番よかった『ファミリー・タイム』に出演していたエリナ・クニヒティラ)のきれいな編み込みは美容師のタイナ(ピルヨ・ロンカ)によるものと後に分かる。うちらはやれる!とドタバタするうち見てみぬふりをしていた問題の数々が浮かび上がり、それらが動き出し、大事な人の結婚式で締めくくられる王道の物語。酒飲みの二人が飲みながらも「目を覚ます」までの話と言える。

ピルッコとタイナの姉妹が自家醸造するサハティを皆楽しんでいるのに、まともに金を払う者はいない。映画はそんな奴らの一人をピルッコが鉈で殴るのに始まる(この映画では鉈でどうこうしたくらいでは人は死なない)。妹パイヴィの結婚式用のサハティを飲んでしまった二人が金策にと取り立てに向かう裏には、飲んでいるものを作る人をばかにするなという憤りがあるように思われた。ピルッコとタイナが共に職場やグループをクビになるのも、前者は仕事中に酒を飲んだり酔ったまま合唱の練習に出たりするためだが後者は酒臭いと理由を付けて体よく追い払われたように私には見えた。

妹に頼まれたものを飲み切ってしまうほどのサハティを作るその腕前は最高なのに、姉妹はいまだ「品評会で優勝した」父親に「おうかがい」を立てに行く。賞品の帽子を被って試飲する口元のどアップの不気味なこと。しかし物語の最後、父の舌も大したことがないと分かった二人はその支配から抜け出すのだった。ただし映画は大団円ではなく、アルコール依存症の問題を明確に提示して終わる。ピルッコが酒から抜け出せないのは、タイナに「真実」を言えないでいたことも根にあったのだろうか。

これまで見てきたフィンランド映画ではサウナは男の領域とされており、その弊害も説明されていた(ゆえに『ファミリー・タイム』の女達のサウナという、存在しながら描かれてこなかった場面にぐっときた)。本作でも御用聞きのように姉妹というかピルッコにくっついているハウキ(ビッレ・ティーホネン)が二人の従兄弟らに「サウナはどうだ?」といわば男チームに引きずり込まれる(ピルッコいわく「何、指示待ち?行きたいなら行きな」)。いっぽう同映画祭で見た『リンゴ泥棒』(2024年サンッパ・バタール脚本監督)では夜に意気投合した男女の集団が一緒にサウナに入っており面白く思った。世代差や地域差もあるのか、ともあれ憶測ではどちらもそれらしく、ありそうに感じられた。