ローズ家 崖っぷちの夫婦


ローズ家の戦争』(1989年アメリカ)を30数年ぶりに見て印象的だったのは、バーバラ(キャスリーン・ターナー)とオリバー(マイケル・ダグラス)がパーティでのある事につき言い合いになるも最後にはあいつらには分からないさと笑い合って寝るところ。共に友人もいない二人は映画の作り手でもあるダニー・デヴィートが一般論として語ろうと世界に二人だけ、社会から隔絶しており、それがよいことでなくともコメディだし、今より女性差別のはっきりしていた時代の作品でも一対一の関係に感じられ面白く見ることができた。

本作でもアイビー(オリビア・コールマン)とテオ(ベネディクト・カンバーバッチ)は「共犯」となってパーティを抜け出すので「世界に二人だけ」に見える。その理由をリメイク版は彼らが「イギリス人」だというところに置いているのかと思ったら、オープニングに置かれた一番笑えたカウンセリングの場面を除いては意外と強調されない。しかしいくらケイト・マッキノンがあれこれを超越していようとアンディ・サムバーグとの夫婦の存在はアイビーとテオを世界と繋げてしまうノイズだった。終盤皆が軽口っていいね!と二人の真似をするとその場がえらいことになってしまうというのは面白かったけども。

原作小説は分からないけれど、ローズ家とは「片方が稼いだ金でもう片方が家を作り上げるがその間ずっと一人きりだった、その家を互いに譲らなかった」という話である。オリジナルとリメイクでの男女の反転は時代の変化だけではいまだ成し得ず「嵐」を必要とする。同じ週に公開された『女性の休日』(2024年アイスランドアメリカ)では女は男の全てを奪おうとしているわけではないと何度も出てきたし今でもパイを分け合う例がよく口にのぼるが、この映画のいわば「最高裁の判事が全員女性になった」状態は、夢を追いなよと言っておきながら「ぼくは大きな仕事、君は小さな仕事」に戻りたがるテオにしてみれば庇を譲って母屋を取られたという感じなんだろう。それでもDon't be Dickと言い聞かせながら努力した見返りが、オリジナルとは少々異なるラストシーンということになろうか。