ホーリー・カウ


ジャンル「親子が同じ店で夜遊びしている映画」である。それが示しているのは、その作品の舞台は映画であまり描かれない場所、狭義の世界だということだ。映画の終わりの「たくさん横転する」ストックカーレースの映像のいわゆるドキュメンタリーぽさに何故だか胸打たれて涙が出た。

祭りでのせられパンツを脱ぐ、知り合った女性の家に入る前に立ち小便する、セックスする(が勃起しない)、18歳の主人公トトンヌは登場時からちんこを振り回しているが迷惑がられているというより軽んじられている感が強い。彼が自分を人間扱いしない女性ではなくその兄の方を(暴言を吐かれたとはいえ)攻撃するのもまた、ちんこを振り回しているように見える。それでは物事は悪化するばかりだ。

早朝から深夜まで一人で牧場を切り盛りしている(「事実を言ってるだけ」)少し年上のマリー=リーズの描写が素晴らしく、トトンヌの妹が懐くなんて描写が無いのがよい。彼女とのセックスが彼の側からすれば生乳を手に入れるのと引き換え、つまり自分の体を売っているようにも取れるのを始めセックス描写も面白い。干し草の上での僅かな描写がきらめいている。当初「女の子とやる」のが目的だったのが行為そのものや相手に興味が出てきて勃起もするようになるのは、お金のためだったチーズ作りが少なくともひと時はチーズに熱中するようになるのに似ている。

生乳と人手を盗みや友情でまかなうも無理からの破綻で、トトンヌは幼い妹と二人…保護者であることを考えると一人きりになってしまう(ここへ来て妹の方が兄の支えにもなるという描写がよい)。それでも彼は作ったチーズをマリー=リーズに届け、親友の出るレースを見に行き心から、体が動いてしまうくらい応援する。彼女が最後にばっと乳を見せるのは、非情な世界を生きる仲間として認めるよ、というメッセージのようだと思った。