侵触


前半は母と娘の、後半は母と娘のような者達の、完全に女だけの話である。しかし男の存在する世界で生きる女達の話であることが、元夫が「娘を恐れて逃げた」と示唆されることを始めとして表現されている(これは昨今日本でよく取り上げられる、子が「普通」でないと離婚する男性が多いという問題に繋がる)。最後に再び母と娘の物語となるが、後半を経ていることで、母と娘の濃密な関係は「母と子だから」という必然のものではなく、娘のそばにいるのが母親だったから、母親しかいなかったから娘が執着しているのだということが示されている…と私は受け取った。教会もあのような母親を救えない。

『悪い種子』『聖ロザリンド』系の話かと見ていたら、心に残ったのは、母のヨンウン(クァク・ソニョン)に「相手の嫌がることをしてはだめ」と言われた娘のソヒョン(キ・ソユ)が「なんで?好きなことが何もできないじゃん」と返して癇癪を起こすところ。ソヒョンは生まれながらの悪だが(終盤、自分を殺せば?と言われた相手にひるむのが私としては釈然としなかった)、ラストシーンの「今度はうまくやるから」との理屈といい、好き放題やりながら誰かの愛情を得たいという存在はこの世に幾らもあるじゃないかと思う。先の会話の後トラックへの衝突を免れた運転席のヨンウンが後部座席の娘を振り返る場面が想像と予感を何とも煽り、ここから映画が格段に面白くなる。

ミン(クォン・ユリ)の「もちろんあんたの子じゃない、私の子」は原作漫画にもあるセリフだろうと何となく思うけれど、韓国語で表現されると強烈だ。これは映画のどこに繋がっているんだろう?