愛はステロイド


『ミッション : インポッシブル ファイナル・レコニング』では登場するや観客(私)を魅了したケイティ・オブライアンだけど、こちらでは彼女演じるジャッキーはルー(クリステン・スチュワート)を一目で虜にする。「筋金入りのレズビアン」と言われるルーがジャッキーが男と楽しげに話すのを消灯で邪魔したり、キスされて「ノンケの思い出作りじゃないよね」と確認したり、怪物呼ばわりで排除される辛苦も含め、最近見たものなら『The Summer あの夏』(2023年韓国)もそうだったように冒頭からレズビアンロマンスであることを強く訴えてくるのがいい。舞台が80年代なのは普通にいたはずのレズビアンや女性ボディビルダーがはっきり出てくる映画のなかった時間を取り戻しているようだ。セックス描写も最高で、ルーに触れられたジャッキーの二の腕の筋肉が愛のステロイドに脈打ち…なんてのも面白い。

(以下少々「ネタバレ」しています)

「男ともやる」ジャッキーにむかついて助手席から追い出すも、勝手にその体に触り殴れば殴り返してくるような男が近くにいると気付いたルーは彼女を乗せて自宅へ帰る。女にとって自分(たち)だけの家の中がいかに安心できる場所かが伝わってくる。しかし強者である男にとって家は別の意味を持つ。ルーの姉ベス(ジェナ・マローン)へのJJ(デイヴ・フランコ)の暴力に「警察は介入しない」し、自分の肖像画を飾っている類の父親(エド・ハリス)は「おれたちで解決しよう」「(夫を訴えない)ベスの気持ちを尊重しよう」。男のこの「うちのことはうちで」に対し、それならうちの中でと乗り込んでJJを一撃必殺するジャッキーは巨人となる(そう見えるよう撮られている)。話がそれで終わらず娘を取り込み加担させてきた父親がルーを痛めつける時、愛のステロイドが脈打ちジャッキーは遂に本当に(?)巨人となる。女性が巨大化するのを見るのは『終わりの鳥』(2024年イギリス・アメリカ)に次いで今年二度目で、爽快感がある(でかいと移動も早いし人も潰せる)。

『ベイビーガール』(2024年アメリカ)でニコール・キッドマン演じる主人公がうつ伏せでないといけないというのはリアルで面白かったけど(ちなみに本作のルーも自慰はうつ伏せ派)、この映画の自分でやるとき指を入れるか聞くというのもよかった。その後のルーのセリフから文脈は分かるが、少なくとも女は指を入れなくてもいけるということが伝わり、冒頭のJJの「いいちんこだろ」の間抜けさも際立つ。