メモリーズ・オブ・アザーズ/あるパブとの別れ

アイルランド映画祭にて短編中編を同時上映で観賞。

『メモリーズ・オブ・アザーズ』は2024年アイルランド、マーク・レッサー、ポーリン・ヴェルメール監督作品。ベトナム戦争の報道写真で知られる写真家の岡村昭彦が北アイルランド紛争の渦中に撮影した作品を取り上げ、20分という尺の中で、日本人である彼がどんな写真を撮ったか、なぜアイルランドに移住したかを語る。

彼がアイルランドで撮影した作品につき、衝撃的だが謎というアイルランド側の言に次いで、彼の側、すなわち日本人の写真研究家や友人がその源を語る。「権力者はうそをついている」で第二次世界大戦あたりの昭和天皇の写真が出て、ケネディアイルランド系でカトリック教徒、彼の母親もカトリックだった…という繋がりの話になる。終盤に流れるNHKのインタビュー映像では、本人の口から、加害者側として生きてきたから被害者の側に子どもを生かしたかったというようなことが語られる(娘いわく「父は私たちをアイルランド人にした」)。

初めて見た写真の数々は、陳腐な言い方だけどどれもセンスがよく目が奪われる。牛乳瓶の一枚に顕著な高文脈が今っぽいなと思っていたら、アイルランドの写真家の一人がそう言っていた。被写体にあまりに近いから物語が撮れると。また新聞写真じゃないから白黒じゃないし劇的じゃないとの話には、何気に、写真について、色が着いているから衝撃的だという言を初めて聞いたような気がした。

『あるパブとの別れ』は2024年キアラン・オメイニー監督作品、2021年に閉店したパブ「ヒューズ」についてのドキュメンタリー。時折挿入される昔の店内の映像に対し、プレゼンターであるブレンダン・グリーソンも加わってのミュージシャンによる演奏には当然ながら「演奏していない人(他の客)」がいないので、終わったんだなという寂しさがよくよく伝わってくる。しかし、本当の事情は分からないけれど、店を開いた人の息子による「閉店を決めた理由」がたまたまYouTubeでエルヴィスのIt's Now or Neverを聞いたからというのには笑ってしまった(グリーソンも爆笑していた)。

インタビューの背後が窓越しのダブリン中心部の真昼間の道というのがいいなと思っていたら、ミュージシャンの一人が「外でジョギングしてる人を見て思ってたものだ、中でビールを飲んだ方がいいのにって」。女性グループ(敢えて女性を集めたとのことなのでこう書く。グループ名を忘れてしまった…)の一人は「この街にはタダで集まれる場が他にない、パブではビールは頼むけど、ここは演奏する人は水でいい(お金を使わずに済む)」。皆が来るわけじゃないけど誰でも来られる場というのが必要なわけだ。ちなみに他の女性は「コロナ禍の始めは張り切って一人で新しい曲を覚えようとしたけど家で演奏したことがないからやめてしまった」と話しており、場があって生まれる音楽というのが実にあるものだとも思わせられた。