パディントン 消えた黄金郷の秘密


証明写真機の「赤い円の中に顔を入れて」が分からないのと英語が「きれい」(俗でない。俗が悪いということではない)なのは裏表だ。オープニングの「くまの暦で数年前…」に、パディントンベン・ウィショー)は暦も何もかもよその文化に合わせて暮らしているんだった、名前だって誰も発音できないからパディントンなんだった…と思っていたら終盤久しぶりに本当の名を呼ばれる。英国市民になりパスポートを取得しグルーバーさん(ジム・ブロードベント)に自分はunmixedだと断言したパディントンが、故郷と仲間に会う旅を経てmixedだと新たに認識する物語である。

ブラウンさん(ヒュー・ボネヴィル)とキャボットさん(アントニオ・バンデラス)、おそらく歳のそう変わらない「父親」二人のうち、後者がインカの黄金郷の発見に命を賭けてきた代々の先祖に取り憑かれているのに対し前者は「アメリカ人の女性の新社長」という少し会っただけの人間に盛大に感化されているのがいい(本作のベストシーンはそれ絡みの、機内の紫タランチュラのくだり)。しかしキャボットさんが黄金郷にこだわる理由を「お金があれば窓がある家に娘と住める」としているのが正しく子ども向けで、優しい映画だなと思った。

私は実生活でも創作物でも地元(生まれ育った土地ではなく今住んでいる所の意)から出来るだけ離れたくなく、ドイルのホームズものでもクリスティ(のポアロものとしておくべきか、同じ移民の境遇だから)でも主人公がロンドンから遠ざかると興味が減じてしまう。本作にそれを言っても意味がないけれど、最初と最後のロンドンに魅力がないのは残念だった、『パディントン2』(2017)冒頭の仕掛け絵本の映像が忘れ難いシリーズなだけに(ブラウン夫人(エミリー・モーティマー)の描いた絵の場面が、街じゃないながらそれに相当するのかなと思ったけれど)。お店「エルドラド」だけが妙に印象に残った。