プロフェッショナル


毎話のラストで「ジェリー・アダムズはIRAのメンバーであると決して認めなかった」と念押しする、パトリック・ラーデン・キーフの著書が原作のドラマ『セイ・ナッシング』(2024)はIRAでの女の仕事が男の世話だったところ初めて戦闘員になった若い姉妹が主人公だが、始めのうちは男と同等の仕事は回ってこない。1974年が舞台の本作(原題In the Land of Saints & Sinners)では主人公フィンバー(リーアム・ニーソン)と対峙するIRAの女性デラン(ケリー・コンドン)が若い男二人を手足としてこともなげに使っているが、実際どうだったのだろう。ともあれ「(雑貨屋で道を聞く役で)あんたが行くんだよ」「なんでおれが?」「道に迷いそうな顔をしてるから」なんてセリフなどに「頭がよくて残忍」なキャラクターが映画的に表されており面白かった。むろん彼女にとって暴力行為はテロでなく国のための戦争である。

フィンバーはトレーラーで母と暮らす少女モヤに自身の猫を託し「愛するものがあれば人間らしくいられる」と伝える。アイルランドとは憎み合わされている者達の国であり、アイルランド生まれの役者達が演じる本作の登場人物はその中で愛をよすがに生きていこうとしている者ばかりだ。「戦争で自分は変わってしまった、帰ってきたら妻も死んでいた」フィンバーを始め、戦争には行かず「善悪が分かるから」と警察になったクリスティ好きのヴィンセント(キアラン・ハインズ)、ロバート(『探偵マーロウ』にも出演していたコルム・ミーニイ)に「こんなレコード聞いてあんたはクィアか」と聞くケヴィン(ジャック・グリーソン)はおそらく自身がそうで、家出したのかと問うデランに対し愛する存在の無い場所は家とは言えない、そこから逃げてきたのだと返す。両親を失ったデランが弟カーティス(デズモンド・イーストウッド)を是が非でも守ってきたのも同じことだろう。

クライマックスであるパブのシーンの緊張感が素晴らしい。幸運にも死ななかった人々が逃げ出した後の暗闇からは、殺し屋として皆の目の前で銃を撃ったフィンバーが最早この街にはいられないことが伝わってくる。それでも彼とデランそれぞれに救いのあると言える結末がこの映画のメッセージと言えるだろう。