夢見る人


マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2023年フランス、アナイス・テレンス監督作品。

青いドレスのマダムが男を迎える絵を枕元に寝ている使用人のラファエル(ラファエル・ティエリー)のところへ青いドレスのアーティストにして主人のギャランス(エマニュエル・ドゥヴォス)が現れるが彼は招き入れてはもらえなかった、「おれは景色だ」ったという悲恋のドラマのうちに、他者を「ミューズ」にすることの残酷さが描かれる。ミューズにされる側に沿って描かれるので見るのが辛いが、ミューズを扱うなら見る者をそうさせるのが筋だ。

庭に仕掛けた爆薬で殺したモグラをつるすのに始まり、突然やって来たギャランスのための朝食のパンにジャムを塗ったり彼女が捨てた絵を自分と母が暮らす小屋の壁に掛けたり、映画の前半では働くラファエルの手が大きく映される。手を使う彼は楽しそうに見える。しかしギャランスがその手で彼の像を作り始めてから彼が手を使う場面は消える。この映画では屋敷に満ちるのが生活から芸術へと移っていくと悲しみが増える。ミューズが女ならドレスでも纏うところが、ここではラファエル自身が掘った粘土がそれに相当するというのも悲しい。

「男の視線に対する嫌悪」もテーマとしてきたギャランスは片目の、すなわち他の男のようには見る力を持たないラファエルのイメージを更に「目を閉じた」像に表すが、彼の方は自分がもう片方の目も持てば「景色」じゃなくなると考える。目を持つことが叶う前に自身のイメージだけを連れ帰ろうとしていると知ったラファエルは彼女の前にイメージとして現れ思いを果たすが、これは冒頭彼が馴染みの配達人の女性に「私を怖がらせて」と求められ髪を掴んで引っ張っていくプレイをしていたのと同じことである。作中で彼がするセックスは女の抱くイメージへの奉仕であり、ギャランスをイメージしての自慰の方が実は気持ちがよかったんじゃないか、それは女の多くにとっても言えるんじゃないかとふと考えた。