ザ・ルーム・ネクスト・ドア


再会したマーサ(ティルダ・スウィントン)とイングリッドジュリアン・ムーア)の女二人は互いの中に持っている「物語」について話す。イングリッドは画家と写真家とヴァージニア・ウルフを含む関係を作品や実話を元に創作しようとしていると、マーサはバグダッドで目にし当人に訊ねた戦下での男達の話に手を加えPCの中に保管していると。物語は生まれアレンジされ、様々な形で表されあるいは隠され保持される。それらを内包したこの物語自体は、オープニングクレジットでは上と下、左と右に分かれていた役者二人の名前が&で繋がるのに終わる。本人達も&の関係になったのかなと思わせるラストだ。

ニューヨークでマーサのノートを見つけたイングリッドは森で「あなたを書いていい?」と問い承諾を得る。朝方、開いているドアに安堵したイングリッドは部屋に入りベッドに横たわりマーサに重なる。二人が繋がったこの美しい画の後、場面は変わって風の吹き抜ける昼、薬を飲む決意をしたマーサは「忘れないで、あなたは何も知らない」とイングリッドに軽いキスを求め送り出す。後日、イングリッドが二人の物語を語ると警察官(アレッサンドロ・ニヴォラ)は質問に答えるだけにするよう言い渡し、二人には安楽死であるものを犯罪と認めさせようとする。このことは私には、時に隠さねば生きられず隠していることを暴こうとする、クィアな存在に対する蹂躙に重なって見えた。

イングリッドはかつてマーサから主にセックスの相手として「受け継いだ」「共有した」男であるダミアン(ジョン・タトゥーロ)に自分達の事情をすぐさま明かす。しかしマーサと共に暮らすうち、本を書いても実感は出来なかった、死に向かうものに対する感覚が変化し、やはり死にゆくものである「この惑星」に絶望し悲劇的な面しか見ない彼と自分とは違うと確信する。警察官と元恋人は両極端のようでいて、「隣の部屋」同士の関係から最も遠い存在だという点は同じだ。前日に見た『リアル・ペイン』のベンジーキーラン・カルキン)…「隣の部屋」同士の関係がうまく築けず壁を壊して入っていってしまうやつが彼らに会ったらどんなことが起こるだろうとふと考えた、「ピンクの雪」に近付けるかもと(しかし会うことなく終わるんだよね、今の社会では特に)。