
主人公ソ・シミン(小市民)役のシン・ヘソンがドラマ『生まれ変わってもよろしく』(2023)でアン・ボヒョンと共演していたこともあり、彼が苛め役だった『梨泰院クラス』(2020)が脳裏をよぎるも、あちらはその父親こそが主人公いや若者の敵だったのが、こちらでは普通なら一番の悪とされる権力者の父親が不在。成人済のハン・スガン(イ・ジュニョン)はどこにも帰さず、おれはお前らとレベルが違う、面白いから暴力を振るうと言ってのける本人そのものが悪。生徒間の暴力を題材とした作品も多く作られているけれど、母親のみ登場する本作では父親の不在が目立って感じられた。
正規教員の地位を目指して「猫をかぶっている」描写含め、序盤はシン・ヘソン最高!ソ・シ・ミン!ソ・シ・ミン!と見ていたんだけど、これはそういう映画ではなく、いわば「市民」が拡がっていくのが肝。顕著なのが当初は見て見ぬふりをするよう助言する先輩教師ジェギョン(チャ・チョンファ)の変化で、絶妙な距離を取りながらの「スガン(イ・ジュニョン)に初めて注意した…」の場面などぐっときた。似た感覚を最近覚えたなと思い返してみたら、『市民捜査官ドッキ(原題「市民ドッキ」)』でラ・ミラン演じるドッキに影響されてパク刑事(パク・ビョンウン)が市民のために働くようになるところだった(「若い頃は私も…」のジェギョンと異なり、「男性」である彼は下へ降りることをしてこなかったわけだけど)。
当初隠れていたシミンが立ち上がり諦めることをしなくなるのは、生徒から「生きたい」と助けを求められたから(彼女が訪ねたジニョンのハルモニも、直訳では孫を生かしてやってくださいと言っている)。レベルはあれど、教師の仕事の根っこがそこにある。先輩教師の変化に比べて生徒達のそれが見えづらいのも、大人にまず責任があるからということなんだろう。