
映画は主人公ヨンギュ(ホン・サビン)が大切な存在である義理の妹のハヤン(キム・ヒョンソ)を傷つけた(実際にはもっと「裏」がある)同級生を殴るのに始まり、更に大切な存在を更に傷つけた相手を殴ろうとするがハヤンの制止もありふと気付いてやめ、京畿道のとある町を出て行くのに終わる。原題は彼が「皆が同じように暮らしている」と信じる『オランダ』。ティーンエイジャーが二人バイクで格差社会から果たして脱出できるのか、映画にそういう類の現実味や希望を求めるわけではないが、あのラストシーンには見覚え以上のものを感じられなかった。
冒頭、店のバイクは盗まれるはでもうお前を雇う余裕がないからと自分をクビにする店主(チョン・マンシク)の前にヨンギュは無言で何度も立ちふさがるが、どうなるものでもない。結局彼はバイクを盗む側に回るが、その世界でくたびれ果て傷つき、最後にはハヤンに「助けてくれ」と初めて頼る。しかし女は貢物として利用されるだけの世界で彼女が彼にできる(と彼が、また彼女が思う)ことは他になかった(ここは文七元結かよとちょっと苦笑してしまった)。果たしてそれでいいのかと我に返る。
韓国映画で幾度も見てきた、男と男の、いやソン・ジュンギ演じるチゴンを対象とした男から男へのロマンがここにもある。湖畔でヨンギュを待つ小さな姿を捉えた感傷的なカット。序盤で事務所(「アジト」)へ行くとドラマで見慣れた裸の上半身、身に付けているナイフで何をするのかと思えば魚を捌き、家ではいつもハンバーガーのヨンギュにチゲをふるまってくれる。「おれをヒョンと呼べ、ここを家だと思え、でもお前の家には干渉できない」と言いながらある日やって来る。部屋で「オランダ」=夢の箱を見られる時の何とも言えない感覚。チゴンがヨンギュの代わりに自分の体の末端を差し出す姿に『幸福な王子』がふと脳裏に浮かんだ、結末は異なるけども。