シンデレラ 3つの願い


ノルウェー映画史上最大の動員数を記録」した本作は、チェコのボジェナ・ニェムツォヴァーによる『Tři oříšky pro Popelku』を原作とする1973年のチェコスロバキア東ドイツ共同製作の同名映画(邦題『シンデレラ 魔法の木の実』)のリメイクなんだそう。そちらを未見なので改変の程は分からないけれど、明るく元気な雰囲気は同じなんじゃないかと思う。

パンプスというかハイヒールは現代では自分で移動しない(その必要のない、裏を返せば移動を制限されている)者の履き物だという話が時折女性の間で持ち上がるけれど、このシンデレラ(アストリッドS)はどうするのかといえば冒頭から予想のつくように馬車には乗らずブーツで馬を駆ってお城に向かうのだった(『スノーホワイト』(2012)で甲冑姿で馬に乗って攻め込むクリステン・スチュワートも思い出す)。ガラスの靴は携えて行き履き替える描写がちゃんと挿入されるあたり自分次第という今っぽさがあってよい。

シンデレラの願いに応じて与えられるのはまず狩りを教えてくれた亡き父の弓と狩猟用の服、次いで亡き母のドレス。後者についての継母(エレン・ドリト・ピーターセン)の「盗んだドレスで…」とのセリフから、これらはシンデレラが「奪われた」ものだとはっきりする。最後の願いに出現するのが「今のままの私」でありそれを見た継母の言葉が「お前には価値がない」であることから、それこそが彼女から奪われた最大のものだと分かる。ふくろうがしたのはそれを取り戻す手助けなのだと。

三度会っても相手が「誰」だか分からない王子に対してシンデレラが言う「顔が灰だらけでも煙突掃除人じゃない、弓を携えていても猟師じゃない、ドレスを着ていてもお姫様じゃない…私は誰?」とは女性が男性に問うべきことなんだろう(原作のキャッチーなセリフだと推測する)。ちなみに王子の「父上は私に成長と結婚を望んでいる」とのセリフから彼が友達といつまでたっても「子どもっぽい」遊びに興じている理由が分かるが、「現代的」なアレンジゆえに夜中に靴片手に現れて娘を探し回る迷惑千万が際立ってしまい、楽しく見ていたのが最後には(自分で決めた相手だとはいえ)結局結婚して王政は続くのかという、このような作品に抱いても致し方ない思いが少し湧いてしまった。