呪呪呪 死者をあやつるもの


ドラマ『謗法 運命を変える方法』の劇場版。杖から映るチョン・ソンジュン チーム長(チョン・ムンソン)の「事件がまた…」に続いてテーマ曲とオープニングタイトル、新たな場で活躍している主役イム・ジニ(オム・ジウォン)の登場、元気だったのかと嬉しくなるあの人この人が既知の小道具と共に出世しているという、未見でも支障なさそうだけどドラマを見ていればより楽しい冒頭。中盤にはペク・ソジン(チョン・ジソ)によるオンニ呼び、アジョッシ呼びのエピソードも蘇った。

同じ2020年の映画なら例えば『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』なども強烈にそうだったけれどヨン・サンホの書く作品は常にそう、『半島』『地獄が呼んでいる』『JUNG_E ジョンイ』など全て悪の描写に主眼がある。ドラマ『謗法』には悪鬼の憑依というひねりがあったが(チーム長が「真の悪」と指摘するのは親玉ではなくこすっからい奴の方なのだ)、映画はホームレスの人や不法滞在者を殺して平気な親族経営の大企業をこらしめんとする存在を主人公側が止めるという骨子で、それが複雑さゆえの面白さというより重みのなさに通じているように感じてしまった。

ドラマの最終話でソジンの発する「死ね、死ね」が、つまるところ悪に対する気持ちってそれなのだろうかと心に残ったものだけど、映画の序盤に彼女と繋がったジニが聞くのもそれなのだった。「被害者」によって理事が殺される時にふと心の中にそれが湧いてきて、同時にそれでいいのだろうかという気持ちもやはり湧いてきて、言ってみればこの物語は私(たち)の「死ね」という心の叫びの行方を描いているのかもしれないなどと考えた。