パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女


カーアクションについては、冒頭の、ジャッキー映画も思い出させる長丁場の一幕からしてさほどすごいとは思わなかったけれど(去年『モガディシュ』や同じ釜山が舞台の『ハード・ヒット 発信制限』見ちゃってるしね、カーアクションはこれらの方がずっと上)、細かな設定や描写の今っぽさが面白かった。配信なんて韓国の映画やドラマにつきものだけどモッパンというのはそういや見たことがなかったし、一番はパク・ソダム演じるウナが風の吹きこむ心地よさそうな部屋で猫に向かって「ママはあなたのために働いてるんだよ」と語り掛けるあたり。侘しげでも寂しげでもなく、ごく普通に。

オープニング、ウナが車のドアを蹴って運転席に収まるというちょっとした細工に心惹かれる。女だからと乗ろうとしない客に対してアクセルをふかすなど車で意思表示する彼女は後にその出自が分かると一層、車、それも特定のじゃなく世界中の車と根っこで繋がっているように見えてくる(「ディズニープリンセス」が動物と喋れるようなものか)。子どもと怪我人を助けるのにお金の心配をするようなドライバーが往来する世の中で人の車を次から次へと乗り継いでいく、そういう映画って好きだ。

(以下「ネタバレ」あり)

元兼業ブローカーのペク社長(キム・ウィソン)が不法滞在者らを雇って表向き営んでいるのは、「こんなポンコツ」と言われるような車を「鉄くずにはなる」と引き取る廃車処理場。「社長が死んだら失業」と幾らでも稼げる凄腕を彼の元でのみ活かすウナが彼を殺されドライバーを握り直すあのカット、映画の終わりに彼女が「彼の元じゃないなら自分で」仕事しているらしいのも納得がいく。一方で脱北者や外国人を馬鹿にしている、「信用できないから代表を二人に分けて牽制し合わせている」チョ・ギョンピル(ソン・セビョク)は、「人は一人なんだ」と言いながら最後にあんな、全くもって覚悟の決まっていないことをする。

韓国ドラマでは主役の過去を演じる若い役者さん達が面立ちは違うのに演技でもっていかにも当人らしく見せるのにびっくりさせられるものだけど、この映画では『パラサイト』にも出演していた子役のチョン・ヒョンジュンに(この場合、過去じゃなく親子の間柄だけど)最後はヨン・ウジンの面影を感じて驚いた。さすがにこれは顔に似ているところがあったんだろうけど!