キャッシュトラック


なぜこんなところにエディ・マーサンが?と訝しみながら見ていたら、彼演じる警備会社の管理責任者テリーは「人間」代表なのであった。君達の仕事は金を運ぶことで守ることじゃないとはいかにも穏当だが、それじゃあ誰かが殺されたらどうするか、しかと見はせず「悲劇」というので納得する、生ける者に気を遣う、それが「人間」である。対していや、悲劇の因をこの目で見たのだからそいつを同じだけの数の銃弾でこの世から押し出してやろうというのがこの映画の「悪霊」である。

(以下「ネタバレ」あり)

喉元までボタンを留め肉は好まず、正直に答えた者は解放し未成年を搾取する奴は即座に殺すパトリック・ヒルジェイソン・ステイサム)をボスとするグループと、軍上がりで普段は満足いく職に就けず「おれ達はマフィアじゃない」と入念な準備とミッションを繰り返すジャクソン(ジェフリー・ドノヴァン)をリーダーとするグループ。例えば現金輸送車で運ばれる、宙に浮いたふうの金をめぐる…世の中には宙に浮いた金があるとみなすグループにも色々な流儀がある。

最大値まで膨らみ切った金庫を狙う男達が仕掛けるいわば戦争は、強烈なギャンブルを見ているようだった。だって皆、命を掛けたくて仕方がないんだから。戦地に居る者は皆巻き込まれ、各々が小さくも大きな賭け…前に出るか後ろに引くかを決断せねばならなくなる。悪霊であるところのヒルを目にして一歩踏み出してしまったデイヴ(ジョシュ・ハートネット)の姿には、冒頭ハンドルを握る剥き出しの、無防備な腕が思い出されてならなかった。