スプリー


ストレンジャー・シングス」のスティーブことジョー・キーリー主演、父親役にデヴィッド・アークエット。「誰も見ていないところで木が倒れたなら、倒れたと言えるのか?」をこういう映画で聞くとはと思ったけれど、言い得て妙か。

こういう題材だとスプリットスクリーンも「自然」だなと思いながら見ていたんだけども(登場人物に寄りそうならデ・パルマとは真逆、カメラは自分にばかり向いてるんだから)、それを活かしての、といっても映画ファンにはお馴染みの古典的な手を使ってくるところで少し白けてしまった。案外面白かったのは、画面横かよ、皆クビどうしてんだ?のしばらく後に、映画を見ている私達がそれ、というかその逆(縦画面を横にして見ること)をするはめになるところ。

いまだ通用する、ナンシー関の名言「『安室ちゃんが笑顔で手を振る』と『MAXが歌い踊る(だったか、詳しくは忘れた)』は同価値」。ジェシー(実際のスタンダップコメディアン、サシーア・ザメイタ)のように人気や才能があれば、おばあちゃんと一緒というだけで皆が見るしSNSを捨てるところも注目される。「SNSの外」を持っている人の方が強い。

乗客からインセルなどと因縁をつけられるカート(キーリー)がフォロワーを増やしたい一念以外では「差別はよくないよ」などと良識があるのは「ザ・スイッチ」の殺人鬼にも通じるものがあり、おれの家で公開セックスしよう!おれたちがカップルになればフォロワーも倍!などと言い募るのを含めて、映画で見ているだけならむしろすがすがしい。

カートが韓国女子DJにタグ付けしてもらおうと「전설의 남자(伝説の男)」と書いてある服を着て出かけるのには、ここ数年で韓国文化が本当にアメリカ映画に根付いて来たなと実感させられた(ちなみに日本文化も出てくる、侮蔑的な台詞で…「あの男が好きなのは『ヘンタイ』抱き枕」)。そもそも韓国でリメイクしたら面白そうだなとも思いながら見た。


(ちなみに直近で見た韓国文化の登場するアメリカ映画は、Netflixで先月配信された「YESデー ダメって言っちゃダメな日」。ジェニファー・ガーナーエドガー・ラミレスが設けた「YESデー」に息子が一番目のお願いを韓国語で提示してくる。出掛けた韓国系アイスクリーム店で登場するのは「HEROES」のアンドウ役が懐かしい、つまりかつては「日本人」だった韓国系のジェームズ・キーソン)