バッド・レピュテーション


シネマート新宿で開催中のロックドキュメンタリー特集「UNDERDOCS」にて観賞。ジョーン・ジェットの人生をまとめた2018年作品。

▽オープニング、親にねだってギターを買ってもらったという話に合わせて女の子がギターを抱える広告写真。ジョーンが実際に見たものかどうか分からないけれど、ああいうモデルはやはり大事だ。ちらとスージー・クアトロの名が出て、ボウイの「Rebel Rebel」が流れて本筋へ(この映画はこの曲で始まると言ってもいい)。

▽「(ランナウェイズ時代の活動について)私達が普通にロックンロールをやりたいんだと分かると、それまで『可愛いね』と言っていた人達が突然冷たくなった」「(当時の日本ツアーについて)日本では大勢の女の子達が歓迎してくれた、でも女の子だけ、だから分かった、日本じゃ女性は抑圧されてるって」。女が「女」の範疇を出ることを許されないのは今もそう変わらず。

▽後半の「ミック・ジャガーがステージで大きなペニスにまたがれるなら、私にもできる」という言葉からも分かるように、ジョーンは女も性の主体であることを訴え続けてきたが、とりわけランナウェイ時代のエピソードの数々には、女が性的な何かを楽しもうとするとそのそばから対象の側に押し込められ消費されてしまうということを強く感じた。

▽ケニー・ラグナがメリル・ラグナに言われたのを始め、ジョーンの素晴らしさを女性パートナーから説かれたというようなエピソードが作中二つほど語られるが、マイリー・サイラスがプレゼンターを務めたロックの殿堂式典の映像でヨーコの隣のポールもパートナーに何か言われていた。何だったんだろう。

▽ビキニ・キルのキャスリーン・ハンナいわく「ジョーン・ジェットを初めて聞いたのは『Crimson and Clover』(トミー・ジェイムス&ザ・ションデルズのカバー)。代名詞が印象的だった、『彼女』に向けてあんな声で歌えるなんて」。ジョーンは「I Love Rock'n Roll」(アローズのカバー)では性別を入れ替えているから、これは性的な攪乱を狙ったものだろう。

▽私は「I Hate Myself for Loving You」世代なので、映画「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」で流れた時には血がたぎったものだけど、ここではこれはハーレイがまだ覚醒していない、いや、し始める時の歌なんだということを、この映画を見ながらふと思い出した。ジョーンはあくまでも「最初のライオット・ガール」で、皆が続くんだ、続かなきゃならないんだって。