レイトナイト 私の素敵なボス


Amazonプライム・ビデオにて観賞。2019年アメリカ制作、エマ・トンプソン演じる大物コメディアンのキャサリンと彼女の元でトークショーのライターとして働くことになったモリー(製作脚本のミンディ・カリング)のお話。

モリーがセス・マイヤーズ(本人)の面接を受ける場面でふと、この映画って彼女とキャサリンのロマコメみたいなところがあるよなあと思っていたら、終盤モリーが「あなた、私を愛してる?」と言うのでちょっと笑ってしまった(彼女は「敬愛」を熱烈に示すタイプというだけなんだけども)。中盤の「あなたは私の若い頃にそっくり…と言ってくれました」は「プラダを着た悪魔」の引用かな(笑)

ゴールデンタイム唯一の女性司会者であるキャサリンは、地位を維持するために社会でトップとされる「高学歴の白人男性」で周囲を固めている(実際にはその中に大学に行っていない者やポール・ウォルター・ハウザー!演じるライターらもいるんだけど)。モリーは面接で「この職場にmasculineな感じはない」と返して「その言い様はいい」と採用されるが、確かにそうで、それは女性の才能の元に協力することのできる者が集まっているからだろうか。

私がいいなと思ったのは、第一にモリーの「スタンダップによって救われた」というセリフ。これはまずスタンダップの映画と言っていいし、その意義のようなものをはっきり言う映画ってあまりないから。第二にモリーにもキャサリンにも女友達が(今のところ)いないという点。そういう映画があってもいい。キャサリンジョン・リスゴー演じる夫を「世界で一番親しい人」と言うのもいい。

心に残ったのは、作中のキャサリンが普段口にすることの面白さ(「ナイトなら『恋するナイト』みたいだけどデイムは老婦人なんだから」とかね)。彼女のものの見方や言葉の使い方が鋭いんだ、だから伝説的コメディアンなんだと分かる。トークの内容を(「具体的に、政治的に」するだけじゃなく)「個人的に」することでショーは魅力的になる。

作中ほぼ唯一の嫌な奴、つまりこの映画のちょっとした悪役が、テレビ局がキャサリンの後釜に推す若手男性コメディアン・ダニエル(アイク・バリンホルツ…確かにマーク・ウォルバーグに似ているよね・笑)。そのネタは「靴を脱げと言われても脱がないぞ、ここは日本じゃない」「ガールフレンドが『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ていて女ばかり脱いでると言うからちんこを出したらやめてよと言われた」などのアメリカ人であることや男であることを誇示するものばかりで、キャサリンいわく「外国人も女も嫌ってるやつ」。広報担当として呼ばれた女性の「あなたはアメリカ人のお仲間だし…」なんてのも含め、柔らかな「アメリカ」批判を随所に感じた。