That's What I Am


Amazonプライム・ビデオのおすすめに出てきたのを観賞(「スクール・デイズ」というタイトルで配信中)。2011年アメリカ制作。1965年の8年生、卒業間際の少年が小さな世界の中で大きなことを学んでいく話。

主人公アンディが課題の話し合いのため仕方なく「変人の庭(geek corner)」にいるスタンリーに「(大きな体躯と赤毛を蔑み皆がそう呼んでいる)ビッグ・G!」と声を掛けると、振り向いた顔がサイモン先生役のエド・ハリスに似ておりびっくりした。小学三年生の時のことを思い出したものだ。大変に人気のあった担任の先生は、休み時間に周りを囲む皆のうちの誰かが「小学生の時、このクラスの誰みたいだった?」と聞くと一番地味な男子生徒の名を挙げた。あのことが忘れられない。

サイモン先生は教師として生徒達に尊敬され好かれているが、何度も挿入される授業の場面で示されるのは、おそらく毎回最後に幾らかの時間を取って「ジャンヌ・ダルク」を(範読ではなく)朗読する姿だけ。クラス全員がそれに聞き入っている様子には、この時勢だからそんなことを考えるんだけども、オンライン授業であっても強みがあるなと思わせられる(笑)またアンディの問いへの答えから、教師の重要な仕事の一つは「勘」でもって生徒に広義の意味での課題を与えることだと分かる。

後年作家になったアンディが書いた体のこの物語のテーマは明確だ。寛容であることと保身とは相容れないことが多いが保身に走ってはいけない。ましてや教師なら生徒にそのことを教えるために身をもって実践せねばならないはずであり、サイモン先生が同性愛者だとの噂で教職を追われそうになるエピソードはそれを伝えるための要素なのである。ただしアンディは彼がその時どのような態度を取ったか当時は思い及ばなかったろうから、その毅然とした「答えるつもりはない」は先生ならきっとこう言ったろうと後に考えて書いたセリフと取ることができる。

終わりに流れるCSN&Yの「Teach Your Children」が作中の時代よりも後に発表された曲だとて全然変じゃないのだ、これはアンディが過去を振り返って書いた物語なんだから。まあ、どのみち映画はThe Explorers Clubの「Forever」(2008)に始まるんだけれども。


Crosby, Stills, Nash & Young - Teach Your Children