スペインは呼んでいる


あるネタの最中にロブ・ブライドンが「好きな音楽家は」と問われてブルース・スプリングスティーンと返すのに、「Blinded by the Light」(感想)への彼の出演につき、悪目立ちしすぎだろ、何してるんだよと笑ってしまったものだけど、実際ファンなのかもと思い直した。

「今年は才能ある人を大勢失った」とボウイの名前が出てくるのに、いつの話だよ!と思ってみればこの映画、2017年制作なのだった。ロブの「彼はラジオ番組に出たとき僕の名前を思い出せなかった、でも頭には僕の顔が浮かんでいたはずだ」「死んでから彼のtwitterをチェックしてみたら僕をフォローしていた、彼が僕をフォローした瞬間があったんだ」(くだらない…けど気持ちは分かる・笑)からの二人の物真似は結構面白い。

あなたを抱きしめる日まで」に次ぐ自作に新人の脚本家を加えるようエージェントに言われたスティーヴは、「『彼はホットで前途有望です』って、おれは今こそ最高なのに」と精神的に不安定になるが、後の息子とのやりとり…恋人の妊娠につき父親の言うことよりも「二人の問題だから」とパートナーとの関係を優先する息子との会話を見ていると、若い世代に譲った方がいい部分もあるよなあと思わせられる(これはこの番組内のスティーヴに対する考えだからね・笑)

「君はハムレットよりリア王に年が近い」、それならばと独白をやってみせるも「『バーナビー警部』で娘を亡くした父親みたいだ」と言われるスティーヴだが、彼の顔しかほぼ映っていない数分間、この作品は突然、「The Trip」から見慣れた幾多の映画(その中にはマイケル・ウィンターボトムの本シリーズ以外の映画も入っている)の中に滑り落ちる。「The Trip」が始まって編集劇場版が公開されたのが2010年、二作目が2014年、これが三作目なわけだけど、この十年でこの手の作品は配信で幾らでも手軽に見られるようになった。そこへ来てのこのカットや終盤の彼の一人旅部分は、私には随分踏み込んだ味変のように感じられた。